記録的なメモリ価格上昇が企業調達を直撃
メモリ市場調査会社TrendForceが2月2日に発表した最新予測は、企業の情報システム担当者にとって深刻な警告となっている。従来のDRAM契約価格の前四半期比上昇率は、当初予測の55-60%から90-95%へと大幅に修正された。特にPC用DRAM契約価格は前四半期比105-110%の上昇が見込まれ、これは事実上の価格倍増を意味する。
この価格急騰の主因は、AI インフラ需要による供給不足の深刻化にある。クラウドサービスプロバイダー、サーバーOEM、PC OEMが広範囲にDRAMの供給不足に直面している状況で、サーバー用DRAMは約90%の前四半期比上昇が予測され、これは四半期ベースで過去最大の増加率となる。
DDR4生産終了のタイムラインが確定
価格上昇と並行して、レガシーシステムを支えるDDR4メモリの生産終了計画も明確化している。Samsung、SK hynix、Micronは2025年末から2026年初頭にかけてDDR4出荷を終了する予定で、SK hynixは2025年10月に受注を停止し、2026年4月までに出荷を完了する計画となっている。
この移行により、DDR4価格は既に大幅な上昇を示している。8Gb・16Gb DDR4モジュールのスポット価格は5月以降約50%上昇し、2025年半ばの時点でDDR4スポット価格は50-100%上昇、一部では16Gb DDR4モジュールの価格が同等のDDR5パーツを上回る状況も発生している。
製造各社の具体的なEOLスケジュール
- Micron: DDR4・LPDDR4のEOL通知を発行済み、2026年第1四半期以降の生産停止を予定
- Samsung: DDR4製造ロードマップを2026年末まで延長、高収益性を理由とした方針転換
- SK hynix: 中国・無錫工場でのDDR4生産を継続、高マージンを活用
企業への具体的影響とコスト試算
この価格急騰は企業のIT予算に直接的な影響を与える。IDCはメモリコスト上昇により、PC価格が4-8%上昇すると予測している。また、DRAMは ノートPC・デスクトップの部品構成コストの重要な部分を占めるため、前四半期比での急激な上昇はOEMが小売価格を引き上げるか、仕様を調整するか、販促活動を縮小するかの選択を迫る状況となっている。
特にサーバー増設計画への影響は深刻だ。2025年末以降、北米主要CSPの調達急増により企業向けSSD価格も前四半期比53-58%上昇が見込まれる。これは企業向けSSDコスト上昇がプラットフォーム更新予算やストレージ拡張計画に影響を与え、特にサーバー用DRAM価格上昇と組み合わさると影響が拡大することを意味する。
調達戦略の見直しポイント
短期的対応(3-6ヶ月)
BOMのDDR4依存度監査と部品のライフサイクル状況追跡、DDR5互換性評価と代替サプライヤーの事前検証、高信頼性業界では LTB(Last Time Buy)確保と認定・独立系ディストリビューターでの既存在庫調達が急務となっている。
価格動向を踏まえた調達タイミングについて、アナリストの多くは「近日中に構築予定がある場合は現在の価格でRAMを確保すること。2026年中に価格が下がる可能性は低い」と推奨している。
中長期的計画(6ヶ月-2年)
2026年に新システムを設計するOEM・ODM製造業者向けのメッセージは明確で、DDR5への移行が必要。DDR5マザーボードは初期コストがやや高いものの、DDR4の希少性によりGB単価は実際にはDDR5の方が魅力的となっている。さらに、DDR5を選択することで2030年以降まで延長されるライフサイクルが確保され、DDR4標準の完全廃止から製品を守ることができる。
RAMEXperts™️の60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門調達チームによると、企業の多くが在庫バッファーの見直しを進めており、特にミッションクリティカルなシステムでは6-12ヶ月分の戦略的在庫確保を検討している企業が増加している。
市場正常化の見通しと準備すべきこと
価格正常化の見込みは大規模な新製造キャパシティの稼働と結びついており、大部分は2027年末または2028年まで卸売チャネルに届かない見込み。「ベースケース」シナリオでは2026年第3四半期に緩和が始まる60%の確率が想定され、その後2027年初頭に生産量が20%以上増加して段階的正常化が進むとされる。
ただし、「正常化」の定義は再較正されており、2024年の絶対価格水準への回帰ではなく、過去のDRAM価格指数ベースラインに基づく予測可能な四半期変動への回帰を意味する点に注意が必要だ。
情シスが今すぐ検討すべき3つのこと
- 在庫戦略の見直し: 現行システムで使用中のDDR4メモリの在庫状況を精査し、保守・拡張に必要な数量を2027年までの期間で算出。戦略的在庫の確保または信頼できる調達パートナーとの長期契約締結を検討する
- システム更新計画の前倒し: 2027-2028年に予定していたサーバー・PC更新プロジェクトを2026年度内に前倒しできないか検討。DDR5対応システムへの移行により、長期的なコスト削減と供給安定性を確保する
- 予算計画の緊急見直し: メモリ関連支出が従来計画の180-200%に達する可能性を織り込んだ予算修正。上長への報告用に、TrendForceデータに基づく具体的な価格上昇率(PC用DRAM 105-110%上昇)を含めた影響分析資料を準備する
メモリ市場の構造的変化は一時的な調整ではなく、AI時代における新たな常態として捉える必要がある。企業の情シス部門には、この変化に適応した中長期的な戦略立案と迅速な意思決定が求められている。