DRAMアップサイクル「第12四半期」とは何を意味するか
DRAMアップサイクルとは、DRAM契約価格が四半期ごとに上昇を続ける局面を指す。2026年6月15日、RBC Capitalのアナリスト Srini Pajjuri氏は、現在のDRAMアップサイクルが「すでに第12四半期に入っている」と指摘し、生成AI・AIインファレンス・エージェンティックAIの成長に支えられ「あと5〜6四半期は拡大が続く」との見通しを示した。同日、TD Cowenのアナリスト Krish Sankar氏もMicronの目標株価を660ドルから1,500ドルへ2倍以上に引き上げ、AIデータセンターにおける1GWあたりのDRAM搭載量の増加が構造的な収益力を支えると分析している。
従来、DRAM業界のサイクルは好況・不況の波が2〜3年で一巡するのが定説だった。しかし今回のアップサイクルは、すでに3年(12四半期)を超え、さらに2027年末まで継続する可能性がある。情シスにとって、これは「待てば下がる」という過去の経験則がもはや通用しないことを意味する。
Micron決算プレビューに見るDRAM市場の構造変化
Micron Technologyは2026年6月24日に2026年度第3四半期(FQ3)決算を発表する予定である。Micron自身のガイダンスでは、FQ3の売上高は約335億ドル(±7.5億ドル)、Non-GAAP EPSは19.15ドル(±0.40ドル)と示されている。直近のFQ2 2026では売上高が238.6億ドル(前年同期のFQ2 2025は約80.5億ドル)、GAAP EPSが12.07ドル(前年同期は1.41ドル、Non-GAAP: 1.56ドル)と大幅な増収増益を達成している。Micronは過去4四半期連続でアナリスト予想を上回る決算を出しており、今回もこの流れが続くかが焦点となる。
Micronの10-Q(SEC提出書類)によれば、2026年度上半期(2025年8月〜2026年2月)のDRAM売上高は295.8億ドルに達し、前年同期の125.2億ドルから136%増加した。特にFQ2単体ではDRAM売上が187.7億ドルと、前年同期の61.2億ドルの約3.1倍となっている。
TD Cowenは、AIにおけるメモリの役割は「循環的(cyclical)ではなく構造的(structural)」であると明言している。SOCAMMのデスペック(仕様簡素化)を経てもなお、AIインフラ構築におけるメモリ集約度は上昇を続け、従来のサーバーサイクルのように需要が反転するパターンにはならないという分析だ。サーバー向け価格のピークは2026年第3四半期頃と予測されているが、それは「下落」ではなく「上昇ペースの鈍化」を意味するに過ぎない。
メモリ供給メーカー3社の現在地
| メーカー | DRAM市場シェア(Q1 2026) | 新Fab稼働時期 | 注力領域 |
|---|---|---|---|
| Samsung | 38% | P5(Pyeongtaek):2028年 | DDR5・LPDDR5X・GDDR7 |
| SK hynix | 29% | M15X:2026年H2 / Yongin:2027年2月〜 | HBM・AIメモリ中心 |
| Micron | 約22% | シンガポール・台湾:2027年 / ニューヨーク:2030年 | エンタープライズ・AIシフト |
2026年Q1時点でSamsungがDRAM市場シェア38%で首位、SK hynixが29%で続く。3社合計で約90%の生産能力を握る寡占構造は不変であり、いずれのメーカーも新規Fabの本格稼働は2027年後半以降となる。つまり、2026年度下期〜2027年度上期においては、供給側からの価格下落圧力はほぼ期待できない。
「2030年まで不足」の根拠と情シスへの影響
SK hynixの崔泰源(チェ・テウォン)会長は、2026年6月のComputex 2026で「2030年まではまだ不足が続く」と発言し、5年以内に月間ウェハー投入量を現在の約55万枚から100万枚へ倍増させる計画を公表した。具体的には、龍仁(ヨンイン)半導体クラスターの第1Fabを6つのクリーンルームに分割し、装置搬入を当初の2027年5月から2027年2月に前倒しする。SK hynixの月間ウェハー能力は現在の55万枚(うち中国・無錫工場が約20万枚)から、M15X(清州)の4万枚追加、龍仁の36万枚追加を経て、2030〜2031年に約100万枚を目指す。
しかし重要な点として、HBM(High Bandwidth Memory、AIアクセラレーター向け高帯域幅メモリ)は1GBあたり標準DDR5の約3倍のウェハー面積を消費する。たとえウェハー投入量が倍増しても、HBMの比率が高まれば、汎用DRAM(DDR5 RDIMMやLPDDR5Xなど)への供給余力は比例的には増加しない。Gartnerも「意味のある価格緩和は2027年後半まで見込めない」としており、ウェハー供給は需要に対し20%以上不足していると推計されている。
情シスの視点では、この構造的不足が意味するのは以下の3点である。第一に、メモリ価格は2026年度内に有意な下落局面を迎える可能性が極めて低い。第二に、複数四半期にまたがる調達契約を結ばない企業は、スポット市場での調達を余儀なくされ、割増コストを負担するリスクがある。第三に、DDR3・DDR4・DDR5のすべての世代で供給が逼迫しており、特定世代への逃避戦略が機能しにくい状況にある。
メモリ調達の中期予算にどう反映すべきか
サプライチェーンパートナーの一社であるVersaLogicは、2026年末までDRAM価格が「月次10〜20%の上昇」を見込むよう顧客に助言している。仮に月次10%の上昇が6カ月続けば単純計算で約77%の追加コスト、15%であれば約131%の追加コストとなる。
これを情シスの予算策定に落とし込むと、2026年度下期(10月〜3月)に予定しているPC更改やサーバー増設のメモリコストは、現在の見積もりから最低でも30〜50%の上振れを想定したバッファを確保すべきという計算になる。IDCは2026年のDRAM供給成長率を前年比16%と予測しているが、これは過去の平均成長率を下回る水準であり、需要増を吸収するには不十分である。
RAMEXperts™️のような60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーを活用し、複数四半期にわたる供給確約を早期に取り付けることが、コスト予見性を確保する現実的な手段となる。特に、DDR5 RDIMMの64GBや128GBモジュールなど、サーバー向け大容量品は需要集中によりリードタイムが30週超に及んでおり、必要数量の確定と発注の前倒しが不可欠である。
情シスが検討すべき3つのこと
- ①中期予算の再設計:DRAMアップサイクルが2027年末まで継続する前提で、メモリ調達費を独立コストラインとして予算に計上し、最低30%の上振れバッファを設定する。「待てば下がる」という前提は撤回すること。
- ②複数四半期契約の締結:スポット調達への依存を減らし、RAMEXperts™️などのMOQなし最短10日納品に対応した専門パートナーを含め、90〜180日先行の供給確約を確保する。アロケーション制が常態化している現在、契約なしでの調達は価格・納期の両面でリスクが高い。
- ③メーカーFab稼働スケジュールの把握:Samsung P5(2028年)、SK hynix龍仁(2027年2月装置搬入開始)、Micronシンガポール・台湾(2027年)の稼働タイミングを追跡し、供給改善の時期を中期IT投資計画に反映する。2027年後半以降に一部緩和が期待できるものの、HBM優先配分により汎用DRAMへの波及は限定的である点を織り込むこと。
よくある質問
Q: DRAMアップサイクルとは何ですか?いつ終わりますか?
A: DRAMアップサイクルとは、DRAM契約価格が四半期ごとに上昇を続ける市場局面である。2026年6月時点で第12四半期(約3年間)に入っており、RBC CapitalやTD Cowenなどの主要アナリストは、生成AI・推論AI・エージェンティックAIの構造的需要を根拠に、少なくとも2027年末(さらに5〜6四半期)まで継続すると予測している。
Q: メモリ価格の下落を待ってから調達すべきですか?
A: 2026年6月時点の市場構造では、短期的な価格下落を期待して調達を先送りするのはリスクが高い。DDR3・DDR4・DDR5のすべての世代で供給が逼迫しており、サプライヤー各社は月次10〜20%の値上げを見込んでいる。新規Fabの本格稼働は2027年後半以降であり、意味のある供給増は当面見込めないため、必要分の早期確保が推奨される。
Q: SK hynixの生産能力倍増計画で、2027年にはメモリ価格が下がりますか?
A: SK hynixは2030年までに月間ウェハー投入量を約55万枚から100万枚へ倍増させる計画だが、龍仁Fabの装置搬入開始は2027年2月であり、量産規模に達するのは2027年後半〜2028年以降となる。加えて、増産分の多くはHBM(高帯域幅メモリ)に優先配分されるため、PC・サーバー向け汎用DRAMの供給改善への寄与は限定的と見られている。Gartnerは意味のある価格緩和を2027年後半以降と予測しており、2027年前半までの調達計画では価格上昇の継続を前提とすべきである。