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Q. 2026年5月にSamsung労組が18日間ストライキを予告し最大30兆ウォンの損失リスクが浮上――DRAM世界シェア約36%を握るSamsungの供給途絶は情シスの調達にどう波及するか? A. 短期的な供給混乱に加え、Big3が3〜5年LTA契約へ移行する構造転換が一般企業の調達優先度を押し下げるため、マルチベンダー体制の再構築が重要課題となる

RAMEXperts™️ 編集部

Samsungストライキ予告とは何か――DRAM市場シェア約36%の供給リスク

2026年4月23日、Samsung Electronics労働組合が過半数代表権を取得したのち、5月21日から6月7日までの18日間にわたるゼネストを予告した。Samsung Electronicsは世界のDRAM市場で約36%のシェアを占め、NAND Flash市場でも約28%のシェアを持つ最大手メーカーの一角である。同社のPyeongtaek(平沢)工場はHBM(High Bandwidth Memory:AIアクセラレータに直接実装される広帯域メモリ)の主要生産拠点であり、ストライキが実行された場合、AI向けHBMのみならず汎用DDR5 RDIMMやLPDDR5Xなど広範な製品ラインに影響が及ぶ可能性がある。

労組の主な要求は、業績連動ボーナスの上限撤廃と基本給の引き上げである。背景には、競合のSK hynixが2025年9月にボーナス上限を撤廃し、営業利益の10%を従業員ボーナス(業績賞与)として配分する方針を打ち出したことで生じた報酬格差がある。Samsung半導体部門からSK hynixへの人材流出は過去4カ月で200名超に達しており、労使対立の根は深い。

SK hynix営業利益率72%、Samsung Q1利益755%増――メモリBig3の市場構造はどう変わったか

2026年4月27日にDigiTimesが報じたところによると、SK hynixの2026年Q1営業利益率は約72%に達し、グローバル半導体企業のなかでも最高水準を記録した。一方、Samsungも2026年Q1の営業利益が前年同期比755%増と急伸しており、メモリBig3(Samsung、SK hynix、Micron)全体がAI需要に支えられた高収益構造にある。

CNBCの4月27日報道では、Counterpoint Researchのデータとして、DRAM市場が2四半期連続で前期比30%成長を記録したことが明らかにされた。Melius Researchのアナリスト Ben Reitzes氏はMicronの投資判断を「買い」に設定し、2年間の目標株価を700ドル(報道時点の株価に対して約33%の上昇余地)と予測した。メモリ株は過去1年でMicronが約550%、Sandiskが3,000%超の上昇を示しており、市場は「メモリ・スーパーサイクル」の継続を織り込んでいる。

しかし、この高収益構造こそが一般企業の調達環境を厳しくしている要因でもある。メモリメーカーは利益率の高いHBMとサーバーDRAMに生産能力を優先配分しており、PC向けやコンシューマー向けの供給は絞られ続けている。IDCは2026年のDRAM供給成長率を前年比16%、NAND供給成長率を17%と予測しており、いずれも過去の平均を下回る水準である。

3〜5年LTA契約への構造転換が意味すること――一般企業の調達優先度はさらに低下する

LTA(Long-Term Agreement:長期供給契約)とは、メモリメーカーと大口顧客との間で数量・価格を複数年にわたり事前合意する契約形態であり、供給不足時に優先的な割り当てを確保する手段として機能する。2026年4月9日のTrendForce報道によると、SamsungとSK hynixは従来の年間契約から3〜5年のLTA専用モデルへの移行を進めている。

具体的には以下の動きが確認されている:

  • SK hynixがGoogleと5年間の汎用DRAM長期供給契約を交渉中であり、さらにHBM供給を条件に2年間の延長オプションも検討されている
  • SK hynixとMicrosoftが3年間・数十兆ウォン規模のDDR5長期契約の最終調整段階にある
  • SK hynixの契約にはDRAM価格下落時の最低価格保証(フロアプライス)条項が含まれ、契約総額の10〜30%の前払い条件が設定されている
  • SamsungもLTAフレームワーク移行に伴い、価格変動緩和メカニズムと最低年間供給量保証の仕組みを設計中

こうした複数年LTAの対象は、Microsoft、Google等の大手CSP(Cloud Service Provider)をはじめとするハイパースケーラーに限定されている点が重要である。一般企業はLTAの恩恵を受けられないため、メモリメーカーの供給優先リストの下位に位置づけられるリスクがさらに高まる。

ストライキ×LTA長期化×寡占構造――情シスが直面する三重のリスク

2026年4月30日時点で、情シス部門が認識すべき構造的リスクは以下の3つに整理できる。

リスク1:Samsungストライキによる短期供給途絶

DigiTimesの報道によると、一部PCメーカーはストライキに備えて部品在庫を通常の50%増まで積み増している。テレビ端末メーカーはメモリコストの倍増が最終製品価格を押し上げると見ている。TrendForceは2026年Q2のDRAM契約価格が引き続き上昇すると予測しており、ストライキが実施されればその予測をさらに上回る可能性がある。ただし、SK hynixとMicronが部分的に生産をカバーし、下流のセーフティストックが短期的なショックを緩和できるとの見方もある。

リスク2:Big3の長期契約化による一般企業への供給圧迫

メモリメーカーがCSP向けの3〜5年LTAに生産能力をコミットすることで、一般企業が利用するスポット市場やモジュールメーカー経由の調達チャネルへの供給量は構造的に減少する。現在、サーバーDRAMの高容量RDIMMが最優先の調達対象となっており、PC向けDRAMやスタンダードモジュールは供給優先度が低い状態が継続している。

リスク3:人材流出による中期的な技術開発遅延

Samsung半導体部門からの人材流出が加速しており、HBM4の開発・量産スケジュールに影響が出る可能性がある。アナリストはSamsungの「ゴールデンタイム」(AI半導体市場が急拡大するこの時期)における競争力低下を懸念しており、顧客がマルチベンダー戦略へシフトすることで、SK hynixの市場シェアがさらに拡大する可能性がある。これは中期的に見ると、DRAM市場の寡占度がさらに高まり、供給リスクが特定ベンダーに集中する構造を意味する。

メモリBig3の業績・戦略比較(2026年Q1時点)

指標SamsungSK hynixMicron
DRAMグローバルシェア約36%約36%(HBM単体では53%)約25%(HBM単体では11%)
Q1営業利益率前年同期比755%増(利益率非公表)約72%(過去最高)株価は前年比約550%上昇
LTA契約動向年間→3〜5年LTAへ移行中Google 5年/Microsoft 3年交渉中NY新メガファブ建設着工(2026年1月)
供給リスク5月21日〜18日間スト予告安定(ボーナス上限撤廃済み)コンシューマー市場撤退済み

情シスが早期に検討すべき3つのこと

  • 1. サプライチェーンのSamsung依存度を可視化する:自社で使用しているDRAMモジュール(DDR5 RDIMM、LPDDR5X、DDR4等)のチップ製造元を確認し、Samsung製チップの比率を把握する。OEMサーバーやPCに搭載されているメモリの製造元はベンダーに問い合わせれば確認可能であり、ストライキ発生時のリスク評価に不可欠な情報である。RAMEXperts™️のような60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーに相談すれば、代替品の在庫状況と互換性を迅速に確認できる。
  • 2. マルチベンダー調達体制を構築する:Samsung一社依存を避け、SK hynix製・Micron製チップを搭載したモジュールへの分散調達を進める。特にサーバー用RDIMMについては、互換性検証(QVL:Qualified Vendor List)の確認に2〜4週間を要するため、事前に代替モジュールの検証を完了させておくことが望ましい。
  • 3. 2026年下期〜2027年の調達予算に「メモリ価格リスク枠」を設定する:Big3のLTA長期化と供給制約の継続を前提に、メモリ調達予算に15〜25%のリスクバッファを設定することを上長・経営層に提案する。IDCの予測では、PC ASP(平均販売価格)はモデレートシナリオで4〜6%上昇、悲観シナリオで6〜8%上昇が見込まれており、メモリ以外の部材コスト上昇も含めた総合的な予算見直しが必要である。

よくある質問

Q: Samsungのストライキは本当に実施されるのか?

A: 2026年4月30日時点ではストライキは「予告」段階であり、労使交渉の進展によって回避される可能性もある。ただし、Samsung労組は2024年にも短期ストライキを実施した実績があり、今回は過半数代表権を取得したうえでの予告であるため、交渉が決裂した場合の実行リスクは過去より高い。情シスとしては「実施される前提」でリスク評価を行い、代替調達先の事前確保を進めるのが合理的な対応である。

Q: ストライキが発生した場合、メモリ価格はどのくらい上がるのか?

A: 定量的な影響予測は現時点では発表されていないが、TrendForceは2026年Q2のDRAM契約価格が引き続き上昇基調にあると予測しており、ストライキが加わればこの予測をさらに押し上げる可能性がある。一部アナリストはSK hynixとMicronが部分的に供給を補完できるとしているが、Samsungが約36%のDRAMシェアを握る現状では、18日間の生産停止はスポット市場の急騰を招く蓋然性が高い。調達担当者はRAMEXperts™️などMOQなし最短10日納品に対応できる専門パートナーとの連携を検討し、緊急時の調達ルートを確保しておくことが望ましい。

Q: 一般企業がBig3と直接LTA契約を結ぶことは可能か?

A: 現実的には困難である。報道によると、3〜5年LTAの対象はMicrosoft、Google等の大手CSPに限定されており、契約総額の10〜30%に相当する前払いが条件となっている。一般企業がメモリを安定調達するには、モジュールメーカーやディストリビューター経由での長期発注契約(NCNR契約:Non-Cancellable, Non-Returnable)を活用するのが現実的な選択肢となる。