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供給動向

Q. 2026年Q3にSamsungが器興に月産10万枚の新DRAMファブ建設を決定し、SK hynixがHBM3EラインのHBM4転換を延期してDDR5増産に振り向け――Big3の「汎用DRAM回帰」は情シスのサーバーメモリ供給逼迫をいつ緩和するか? A. 両社の増産効果が市場に反映されるのは2028年以降であり、2026〜2027年の調達計画は現行の逼迫を前提に据えるべきである

RAMEXperts™️ 編集部

Samsung・SK hynix「汎用DRAM回帰」の背景とは

2026年7月15日、Samsung Electronicsが韓国・器興(Giheung)キャンパスにおいて、月産10万枚規模の新DRAMファブ建設計画を公表した。従来このサイト(SR5)ではR&Dコントロールタワーの建設が計画されていたが、AI需要の急拡大に伴い、用地の一部を生産施設に転用する戦略的転換が行われた。投資額は「数十兆ウォン」規模とされ、着工は早ければ2026年Q3中と報じられている。

同時に注目すべきは、SK hynixの生産戦略シフトである。2026年6月下旬、韓国・朝鮮日報(Chosun Biz)の報道によると、SK hynixはHBM3E製造ラインのHBM4への転換を延期し、その生産能力をDDR5など汎用DRAMの増産に振り向ける方針を固めた。汎用DRAM(DDR5/LPDDR5X)とは、サーバー、PC、スマートフォンなど幅広い用途に使われる標準的なメモリ製品であり、HBM(High Bandwidth Memory)がAIアクセラレータ専用の高帯域メモリであるのに対して、企業の情シスが日常的に調達するのはこちらの汎用DRAMである。

なぜHBMより汎用DRAMが「儲かる」逆転が起きたのか

SK hynixの戦略転換の背景には、汎用DRAM市場における利益率の急騰がある。業界推計によると、2026年のDDR5営業利益率は最大90%に達する見通しであり、HBMのウェハ面積あたり利益率に匹敵する水準に到達している。SK hynixは2026年Q1に営業利益37.61兆ウォン・営業利益率72%を記録し、全社として過去最高を更新した。同社のHBM売上は総売上の約40%を占めるが、2026年分のHBM供給は年初時点ですでに完売状態であった。

この状況下で、HBM4への急速な転換を進めるよりも、供給不足が深刻な汎用DDR5市場で追加利益を確保するほうが合理的という判断が働いた。SK hynixの関係者は「汎用DRAM市場の供給不足が深刻であり、過度な設備転換競争に参入するよりも、追加利益を確保する」と述べたと報じられている。

Samsung・SK hynixの増産戦略比較

項目SamsungSK hynix
主要施策器興キャンパスに新DRAMファブ建設(月産10万枚)HBM3E→HBM4転換を延期、DDR5増産に再配分
追加施策平澤P5ファブ Phase 1の装置発注開始、P4にHBM4対応ライン(月産10万枚)増設1cノード(第6世代10nm級)を月産2万枚→16〜19万枚へ8〜9倍増産計画
本格稼働時期器興新ファブ:2028〜2029年以降、P5:2028年1cノード増産:2026年末目標だが歩留り安定に2〜4四半期
情シスへの供給影響短期(2026〜2027年)はほぼゼロDDR5 RDIMMの供給改善は限定的だが、価格上昇の「加速」は抑制する可能性

情シスの汎用DRAM調達環境はいつ改善するのか

結論から述べると、両社の増産施策が市場の需給バランスに本格的に寄与するのは2028年以降である。Samsungの器興新ファブは着工が2026年Q3でも、半導体ファブの建設から量産開始までには通常2〜3年を要するため、RDIMMやLPDDR5Xなどの出荷増に反映されるのは最短でも2028年後半〜2029年と見るのが現実的だ。平澤P5も同様に2028年の稼働が見込まれている。

SK hynixの1cノード増産は時間軸が短く、2026年末までに月産16〜19万枚への引き上げが計画されている。しかし、先端DRAMプロセスの歩留り曲線は量産開始後2〜4四半期で安定するのが一般的であり、初期ロットの品質認定リスクも考慮すると、調達担当者が安定供給を期待できるのは2027年半ば以降になる可能性が高い。

さらに構造的な問題として、メモリ供給不足は2027年まで継続するとの見方が主流である。DigiTimesは2026年7月15日付で「主要CSPがDRAMの将来キャパシティを前倒し購入しており、グローバルのメモリ需給ギャップは2027年を通じて継続する見通し」と報じている。Gartnerの「memflation」分析では、2026年4月8日付の公式プレスリリースにおいてDRAM価格が125%上昇すると予測されており(なお、2月発行のearlier reportでは80%と予測)、意味のある価格緩和はH2 2027以降まで期待できないとされている。

「増産発表」と「供給改善」の時間差が生む調達リスク

情シス担当者が注意すべきは、メーカーの大型増産計画の発表と、実際の供給改善の間に存在する18〜36か月の構造的タイムラグである。Big3各社の投資総額は過去最大級の規模に達しているが、現時点で市場に出回る汎用DRAM(DDR5 RDIMM、LPDDR5Xなど)の供給量は、AI/HBMへの生産集中と需要の爆発的増加によって構造的に不足している。

チャネル在庫は2〜3週間分しかないとの報告もあり、未予測の増設需要に対してはアロケーション(割当制限)とリードタイムの長期化が常態化している。VersaLogicの調達レポートでは「DDR3はレガシー製造キャパシティの制約、DDR4とDDR5はアロケーション管理と長期化したリードタイムの対象」と指摘されている。

このような環境下で、60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーであるRAMEXperts™️のようなディストリビューターを通じた代替調達ルートの確保は、サプライチェーンの冗長性を高める有効な手段となる。特にアロケーション対象となりやすい128GB/256GB RDIMMや、サプライヤーの優先順位が下がる中小ロットの調達において、MOQなし最短10日納品に対応できるチャネルを事前に確保しておくことの重要性が増している。

Big3の「生産回帰」が意味する中期シナリオ

2026年7月時点で明らかになった供給側の動きを整理すると、以下の中期シナリオが見えてくる。

  • 2026年下期〜2027年前半:SK hynixのHBM3E→DDR5ライン再配分が段階的に効果を発揮し、DDR5 RDIMMの「価格上昇率の鈍化」をもたらす可能性がある。ただし価格そのものの下落は見込みにくい。
  • 2027年後半:SK hynixの龍仁(Yongin)新ファブが中央化学供給システム(CCSS)の設置を経て限定稼働を開始。ただし本格量産はさらに先。Gartnerの予測では供給制約の緩和はH2 2027以降。
  • 2028年以降:Samsungの平澤P5、器興新ファブ、SK hynixの龍仁クラスターが順次本格稼働し、月産ベースで数十万枚規模の生産能力が追加される。このタイミングで需給反転(供給過剰への転換)のリスクも視野に入る。

情シスの調達戦略上、最も重要なのは「2026〜2027年は増産発表に惑わされず、逼迫前提で動く」ことと、「2028年の需給反転リスクに備えて過剰な長期契約を避ける」ことのバランスである。

情シスが早期に検討すべき3つのこと

  • 1. 2027年度の調達計画は「供給逼迫継続」を前提に設計する:Big3の増産計画は2028年以降に効果が集中するため、2026〜2027年のRDIMM/LPDDRの調達は現行のタイト環境が続く前提で数量・予算を策定すべきである。特にDDR5 RDIMM 64GB/128GBは需給が最も厳しいセグメントであり、Q4以降の調達数量は今期中に確定させることを推奨する。
  • 2. 「増産の時間差」を上長報告に明示する:メーカーの大型投資発表はニュースとして目立つが、「ファブ建設→装置搬入→量産立ち上げ→歩留り安定→製品出荷」のリードタイムは最短でも18〜24か月である。稟議資料には「増産効果の発現時期は2028年以降」と明記し、2027年度予算の根拠として使うことを避けるべきである。
  • 3. 2028年の需給反転に備えた契約柔軟性を確保する:逼迫期の調達では長期固定契約(LTA)に走りがちだが、Big3の大規模増産が2028年以降に重なれば、価格下落局面に入る可能性がある。契約期間は12〜18か月を上限とし、数量調整条項やリプライシング条項の交渉余地を残しておくべきである。

よくある質問

Q: SK hynixのDDR5増産は、いつ頃から情シスの調達環境に影響しますか?

A: SK hynixは2026年末までに1cノードの月産能力を8〜9倍に拡大する計画ですが、先端プロセスの歩留り安定には量産開始後2〜4四半期を要するのが通例です。DDR5 RDIMMとして市場に安定供給されるのは早くても2027年半ば以降と見込まれ、2026年度中の調達環境への直接的な改善効果は限定的です。

Q: Samsungの器興新ファブが稼働するまで、DDR5の価格はどうなりますか?

A: Samsungの器興新ファブは着工が2026年Q3、本格稼働は2028年後半〜2029年と推定されます。この間、DDR5契約価格はGartnerの「memflation」分析に基づき、2026年には125%の価格上昇が見込まれています(2026年4月8日付Gartner公式プレスリリース)。意味のある価格緩和は2027年後半以降とされています。ただし、SK hynixのHBM→DDR5ライン転換が進めば、価格上昇率の「鈍化」は2027年前半から現れる可能性があります。

Q: 2028年に供給過剰になった場合、今締結している長期契約は不利になりませんか?

A: Big3の大型投資が2028年以降に集中稼働すると、需給反転による価格下落が起こる可能性があります。現在の逼迫環境下で3年以上の長期固定契約を締結すると、市場価格との乖離リスクが生じます。契約期間は12〜18か月を上限とし、数量調整条項やリプライシング条項を織り込むことで、供給環境の変化に対応できる柔軟性を確保すべきです。