2026年Q2のDRAM価格見通しとは――Q1の記録的高騰に続く「第2波」
TrendForceが2026年3月26日に公開したQ2メモリ価格予測によると、2026年Q2(4〜6月)の汎用DRAM契約価格は前期比58〜63%の上昇が見込まれている。Q1には前期比90〜95%という過去最大の四半期上昇を記録しており、上昇率そのものはやや減速したものの、絶対額ベースでは引き続き大幅な値上げとなる。
RDIMM(Registered DIMM)とは、サーバーやワークステーション向けにレジスタチップを搭載したメモリモジュールであり、企業のITインフラにおいて最も一般的なサーバーメモリ規格である。Counterpoint Researchの2026年4月6日付レポートでは、64GB RDIMM DDR5の契約価格がQ1時点で$927に着地し、3月の「補償価格」は$1,135に達したと報告されている。同レポートはQ3には$1,500に達する可能性にも言及しており、年間を通じた価格上昇トレンドが鮮明だ。
なぜDRAM価格はここまで上がったのか――AI/HBM需要の「玉突き影響」の構造
2026年4月14日時点のDRAM市場を理解するうえで最も重要なのは、今回の価格高騰が従来の景気循環型ではなく、AI需要によるウエハー容量の構造的再配分に起因しているという点である。
HBM(High Bandwidth Memory)とは、DRAMダイを垂直に積層し、TSV(シリコン貫通ビア)で接続した超高帯域メモリであり、NvidiaのGPUやAIアクセラレーターに搭載されている。1GBのHBMを製造するには、標準DRAMの約3倍のウエハー容量を消費する(Micronは「3-to-1のトレードレシオ」と説明しており、HBMの世代が進むにつれこの比率はさらに上昇する)。この「トレードレシオ」こそが、一般企業向けDRAM供給を圧迫する根本要因である。
具体的な数字で見ると、構造は以下のとおりだ。
- TrendForce(2025年12月26日付)の報道によると、2026年の全世界DRAM生産容量は約40EB(エクサバイト)と見込まれるが、HBMとGDDR7を含むAI向けメモリは「ウエハー換算」で全体の約20%を消費する
- IDC(2026年2月10日付)は、Samsung、SK hynix、Micronの3社が全世界DRAM生産の95%以上を支配しており、いずれもクリーンルームと設備投資をAI向け高マージン製品に優先配分していると分析している
- Micronは2025年12月の決算説明会で、全市場セグメントにわたり顧客需要を十分に満たすことができていないと認め、メモリ供給逼迫は2026年以降も継続すると警告した
メーカー別の従来型DRAM ASP上昇予測(2026年、前年比)
| メーカー | 2025年ASP($/bit) | 2026年ASP予測($/bit) | 前年比 |
|---|---|---|---|
| Samsung | $0.36 | $0.79 | +116% |
| SK hynix | $0.40 | $0.70 | +78% |
| Micron | $0.69 | $1.06 | +54% |
(出典:S&P Global / Visible Alpha、2026年1月28日付)
注目すべきは、HBM自体のASP上昇は控えめ(Samsungで約8%、SK hynixで約1%、Micronで約22%)であるのに対し、従来型DRAMのASPが急騰している点だ。これは、メーカーがHBMの高マージンを優先し、汎用DRAM供給を意図的に絞った結果、需給ギャップが一般企業のメモリ調達を直撃していることを意味する。
情シスへの影響――サーバーメモリの調達コストはどう変わるか
サーバーメモリの調達コスト増は、情シス部門の予算に直接響く。以下に、2025年Q4から2026年Q3にかけての64GB RDIMM DDR5の価格推移を整理する。
| 時期 | 64GB RDIMM DDR5 契約価格 | 前期比変動 |
|---|---|---|
| 2025年Q4 | 約$480〜$500(推定) | +18〜23% QoQ |
| 2026年Q1(確定) | $927 | +90% QoQ |
| 2026年Q2(見通し) | $1,135〜(Q1末の補償価格がQ2の出発点となる見込み。なお、汎用DRAM全体の契約価格上昇率はTrendForce予測で+58〜63% QoQ) | ― |
| 2026年Q3(予測) | 最大$1,500 | 小幅上昇 |
(出典:Counterpoint Research 2026年4月6日付、TrendForce各レポート。注:Q2の64GB RDIMM DDR5の具体的な契約価格予測はCounterpoint Research未公表。汎用DRAM全体の+58〜63%をそのまま64GB RDIMMに適用した場合は$1,465〜$1,511となる)
仮に100台のサーバーに各4枚の64GB RDIMMを搭載する場合、Q1単価$927で計算すると合計約$371,000。これがQ3に$1,500まで上昇すれば$600,000となり、差額は約$229,000(約3,400万円、1ドル=150円換算)に達する。わずか半年の調達タイミングの差が、これほどの予算インパクトを生む。
DDR4も「退避先」にはならない
DDR4(DDR4-3200など)への退避もコスト面では成立しにくくなっている。Tom's Hardwareのデイリー価格トラッカー(2026年4月14日更新)によると、32GB DDR4キットは2025年10月の$60〜$90から、2026年1月には$150〜$180へと2〜3倍に高騰している。DDR4の生産ラインはメーカー各社がDDR5やHBMへ転換を進めており、産業用途に限定される傾向が強まっている。つまり、DDR4は「安いから買う」ではなく「互換性のため仕方なく買う」製品になりつつある。
スポット価格下落は「値下げ」の兆候か?――契約価格との乖離に注意
2026年3月末、Google TurboQuantの発表を受けてメモリ関連株が一時急落し、欧州ではDDR5リテール価格が前月比7.2%下落した。しかし、TrendForceが2026年3月31日付で報じたとおり、台湾のメモリ関連企業はサプライヤーからの契約価格が「完全に安定している」と明言しており、スポット市場と契約市場の動きは明確に乖離している。
企業の調達は契約価格ベースが基本であり、スポット価格の一時的な調整に基づいて「値下がりを待つ」判断は適切ではない。TrendForceはQ2の契約価格についても上昇を維持する見通しを示しており、新規ファブの量産は2027年後半以降まで見込めないと繰り返し指摘している。
LTA(長期供給契約)とは何か――調達の構造が変わった
LTA(Long-Term Agreement)とは、メモリサプライヤーと買い手が価格・数量を複数四半期〜複数年にわたり事前にコミットする供給契約のことである。2026年のDRAM市場では、北米のクラウドサービスプロバイダー(CSP)がLTAを通じて供給の大半を確保しており、一般企業の調達枠が構造的に縮小している。
Micronは2026年分のHBM供給について契約完了済みであり、受注残は2027年にまで及ぶとされている。TrendForceによると、世界の主要CSP8社(Google、AWS、Meta、Microsoft、Oracle、Tencent、Alibaba、Baidu)の2026年設備投資は合計$7,100億超(前年比約61%増)と見込まれ、このうちメモリが占める割合はデータセンター支出の30%に達するとの試算もある(SemiAnalysis推計)。
この環境下では、中堅・中小企業が個別にメーカーやディストリビューターへ見積もりを出しても、アロケーション(割当)を得られない可能性がある。多品番に対応できるDRAM専門の調達パートナーや専門商社を活用し、複数チャネルからの在庫確保を検討することが現実的な対策となる。
価格正常化の見通し――2027年がターニングポイント
複数のアナリストの見解を総合すると、DRAM価格の正常化時期については以下の3つのシナリオが想定される。
- 楽観シナリオ(確率約20%):2026年Q3に価格下落が始まり、Q4に正常化が進む。AI需要の減速が想定以上に早い場合
- ベースシナリオ(確率約60%):2026年Q3に価格がピークアウトし、2027年Q1〜Q2にかけて生産量20%増を背景に緩やかに下落。TrendForce、Sourceability、IDCの予測が収斂するメインシナリオ
- 悲観シナリオ(確率約20%):AI投資の持続とHBM優先配分により、正常化は2027年後半〜2028年初頭まで延伸。SK Group会長の崔泰源(チェ・テウォン)氏は「メモリチップ不足は2030年まで続く可能性がある」と発言している
いずれのシナリオにおいても、2026年度中に価格が2024年水準まで戻ることは想定されていない。情シスの予算策定では、ベースシナリオを前提としつつ悲観シナリオへのバッファを確保する「二重予算」方式が推奨される。
情シスが検討すべき3つのこと
- 1. Q2中のサーバーメモリ調達を前倒しで確定させる:Q3以降のさらなる価格上昇を見据え、64GB RDIMM DDR5を中心に、現時点の見積もりでの発注確定を優先する。DRAM専門の調達パートナーや専門商社を通じ、少量多品番の柔軟な発注も選択肢として持っておく
- 2. DDR4延命か、DDR5移行か、コスト試算を今月中に実施する:既存DDR4サーバーの増設コスト(32GB RDIMM DDR4の現在価格)とDDR5新規導入コスト(64GB RDIMM DDR5の$927〜)を比較し、3年間のTCO(総所有コスト)で判断する。DDR4の生産縮小が加速しているため、増設用在庫の確保期限も合わせて確認すべきだ
- 3. 上長への報告資料に「メモリコスト増のインパクト試算」を盛り込む:Q1の90〜95%上昇、Q2の58〜63%上昇予測、および64GB RDIMM DDR5の$927→$1,500(Q3予測)という具体的数値を用い、サーバー増設計画への影響額を定量的に示す。稟議書に添える根拠としてTrendForce・Counterpointの出典を明記すると説得力が増す
よくある質問
Q: 2026年にDRAM価格が下がる可能性はあるか?
A: 2026年4月14日時点で、主要調査機関(TrendForce、Counterpoint Research、IDC)はいずれも2026年中の本格的な値下がりを見込んでいない。ベースシナリオ(確率60%)では、価格のピークアウトは2026年Q3頃だが、意味のある値下がりは2027年Q1〜Q2以降になる見通しだ。新規ファブ(Micron ID1ファブなど)の量産開始が2027年以降であることがその主因である。
Q: DDR4サーバーメモリはまだ入手できるか?EOL(End of Life)の影響は?
A: EOL(End of Life)とは、メーカーが製品の製造・供給を終了することを指す。2026年現在、Samsung・SK hynix・MicronいずれもDDR4以前のレガシーノードの段階的廃止を進めており、特に4Gb以下の低容量品で供給逼迫が顕著である。TrendForce(2026年4月8日付)によると、DDR4 4Gbの平均価格は3月に前月比20%以上上昇した。既存DDR4システムの増設を予定している場合、在庫のある今のうちに必要量を確保することが賢明だ。
Q: HBM需要が減れば一般企業向けDRAM価格は下がるのか?
A: 短期的にはそのロジックは成り立つが、現実にはAI需要は加速傾向にある。Micronは2025年12月の決算説明会でHBM TAMのCAGRを約40%と予測し、2025年の約$350億から2028年には約$1,000億に達するとの見通しを示しており、需要減速の兆候は見られない。また、Samsungが一部HBM3/3E容量を汎用DRAMへ再配分する動きが報じられているが、これは全体の供給逼迫を解消するには不十分であり、価格への即時的な下押し効果は限定的と考えられる。