DDR4契約価格が前期比最大50%上昇――旧世代が新世代より割高になる「価格逆転」とは
2026年7月30日時点で、DRAM市場では通常の技術サイクルと逆の現象が起きている。DigiTimesの集計によると、2026年Q3のDDR4 8Gbチップの契約価格は前四半期比で最大50%上昇し、業界が当初見込んでいた10〜20%という上げ幅を大きく超えた。さらにチップのビット単価ベース(2026年7月上旬のスポット価格)では、旧世代のDDR3(4Gbチップ)が1ギガビットあたり3.19ドルと、新世代DDR5(16Gbチップ)の2.94ドルを上回る「価格逆転」が確認されている。
価格逆転(price inversion)とは、本来なら旧世代ほど安くなるはずのメモリで、生産中止(EOL)によって供給が細った旧規格の単価が新規格を上回る状態を指す。ここで押さえておきたい定義的なポイントは次の一文に集約される。旧世代メモリが新世代より割高になる価格逆転は、需要増ではなく供給側の生産中止(EOL)によって起きる構造的現象であり、「待てば安くなる」という従来の調達前提が旧世代には当てはまらない。
なぜ旧世代DDR4のほうが値上がりするのか――EOLとHBMへの生産移管の影響
結論から言えば、DDR4値上がりの主因は需要急増ではなく、供給の担い手が縮小していることにある。EOL(End of Life)とは、メーカーが特定製品の新規生産・出荷を段階的に停止する製品寿命の終了を指す。Micronは2025年6月にDDR4・LPDDR4のEOLを通知し、当初計画を維持して大手3社の中で最も早く撤退を進めた。一方、SamsungとSK hynixは当初2025年末〜2026年初のDDR4終息を計画していたが、価格高騰でDDR4が収益源となったことを受けて方針を転換し、生産を2026年まで延長している。いずれにせよ大手3社(Samsung・SK hynix・Micron)は高付加価値のHBM・DDR5・LPDDR5Xへウェハー容量を振り向ける方向にあり、DDR4は段階的な縮小局面にある。
大手3社のDDR4撤退で供給がNanya・Winbondに集中
大手が抜けた穴を埋めているのが台湾のNanyaとWinbondである。Nanyaは2026年Q2時点で売上の約70%をDDR4・LPDDR4が占め、DDR5とDDR3はそれぞれ約10%にとどまる。Winbondは自社16nmプロセスによる8Gb DDR4の量産を2026年に進めている。TrendForceの報道では、大手3社の撤退に伴いDDR4の供給がNanya・Winbondなど台湾勢に集中し、需要が台湾勢のビット供給量を上回るなかで両社が価格決定力を高めているとされる。Nanyaは供給逼迫が2028年まで続くとの見方を示し、SK hynixのCEOは2026年7月に不足が2030年以降まで続く可能性に言及した。旧世代DRAMを使い続ける情シスにとって、値下がりを待つ選択肢は当面現実的ではない。
情シスへの影響――既存DDR4サーバー・PC資産の維持コストがどう変わるか
影響が最も大きいのは、DDR4世代のサーバー・クライアントPCを多数抱え、増設や保守交換で純正・相当品のDDR4モジュールを継続調達している組織である。EOLにより新品DDR4の入手性は今後さらに低下し、リフレッシュ(中古再生)品でさえ2026年に入って30〜50%値上がりしている。エンタープライズDRAMのリードタイムは40週超に達しており、更改・増設の見積もりと納期の前提を組み直す必要がある。
ただし単価の「逆転」はレイヤーによって様相が異なる点に注意が必要だ。サーバーモジュール単位では、2026年7月30日時点の実勢でDDR4 ECC RDIMMの中央値が約8.37ドル/GB、DDR5 ECC RDIMMが約31.75ドル/GBと、モジュール単位ではDDR5が依然として約3.8倍高い。逆転が起きているのは低容量の旧世代チップのビット単価(スポット)であり、「サーバーの増設ならDDR4のほうがまだ割安だが、EOLで入手性が落ちている」という二重の制約を前提に判断する必要がある。
DDR3・DDR4・DDR5の価格比較(2026年7月時点)
| 区分 | 単価 | 時点・出典 |
|---|---|---|
| DDR3(4Gbチップ・スポット) | 約3.19ドル/Gb(ギガビット) | 2026年7月上旬/DigiTimes |
| DDR5(16Gbチップ・スポット) | 約2.94ドル/Gb(ギガビット) | 2026年7月上旬/DigiTimes |
| DDR4 ECC RDIMM(サーバーモジュール中央値) | 約8.37ドル/GB | 2026-07-30時点 |
| DDR5 ECC RDIMM(サーバーモジュール中央値) | 約31.75ドル/GB | 2026-07-30時点 |
| DDR4 8Gb 契約価格 | 前期比 最大+50%(Q3) | 2026年Q3/DigiTimes |
情シスが確認すべき3つのポイント
- DDR4資産のEOL棚卸しと増設・保守在庫の早期確保: 稼働中のDDR4サーバー・PCの型番と搭載モジュール仕様を棚卸しし、故障交換・増設に必要な相当品を今期中に必要数量分だけ手当てする。純正DDR4の新規出荷は縮小方向にあるため、認定ディストリビューター経由での確保ルートを優先する。
- DDR5世代への更改判断の前倒し: DDR4のGb単価上昇と入手性低下が続く前提で、老朽DDR4機の延命コストとDDR5世代機への更改コストを比較する。モジュール単価ではDDR5が依然高いため、更改は台数・時期を分割し、逼迫が2028年以降まで続くシナリオを織り込む。
- 供給元の集中リスクの把握: 2027年以降のDDR4供給がNanya・Winbondに集中する構造を踏まえ、旧世代メモリの調達先が単一ベンダーに偏っていないか、リフレッシュ品の品質保証を含めた代替ルートがあるかを確認する。
よくある質問(FAQ)
Q: DDR4はもう買えなくなるのですか?
A: 2026年7月30日時点で即座に入手不能になるわけではありませんが、Micronは既にDDR4のEOLを進め、Samsung・SK hynixも2026年までの生産延長後は撤退方向にあり、新品供給はNanya・Winbondなど台湾勢に集中していきます。増設・保守用のDDR4は、必要数量を早めに確保しておくのが安全です。
Q: DDR4の価格が下がるのを待つべきですか?
A: 今回の値上がりは需要増ではなくEOLによる供給縮小が主因のため、「待てば下がる」という従来の前提は旧世代には当てはまりにくい状況です。Nanyaは逼迫が2028年まで続くとの見方を示しており、業務に必要な分は待たずに手当てし、DDR5更改の計画と並行して判断するのが現実的です。
Q: いっそ全部DDR5世代へ更改したほうが得ですか?
A: サーバーモジュール単価では2026年7月30日時点でDDR5(約31.75ドル/GB)がDDR4(約8.37ドル/GB)より約3.8倍高く、一括更改は初期コストが大きくなります。老朽機の延命コストと更改コストを台数単位で比較し、更改は時期・台数を分割するのが妥当です。