価格予測が劇的に上方修正、情シスの想定を大幅超過
TrendForceは2026年第1四半期の一般的なDRAM契約価格の四半期比上昇率を、以前の予測55-60%から90-95%へ大幅に上方修正しました。NAND Flashについても33-38%の予測から55-60%へ引き上げられ、さらなる上方修正の可能性も示唆されています。
この急激な予測変更の背景には、2025年第4四半期のPC出荷台数が予想を上回り、PC DRAM の供給不足が広範囲に発生したことがあります。PC DRAM契約価格は四半期比100%超の増加が見込まれ、これは四半期ベースで過去最大の価格急騰となります。
メモリセグメント別の価格動向
サーバーメモリ(DDR4/DDR5)
サーバー用DRAMは四半期比60%超の価格上昇が予想されています。米国のクラウドサービス事業者が2025年後半から発注を前倒しし、サーバー用DRAMの需要が急増している状況です。
モバイルメモリ(LPDDR4X/LPDDR5X)
LPDDR4XとLPDDR5Xの契約価格はともに四半期比約90%上昇し、これらの製品カテゴリーで史上最大の上昇率となる見込みです。米国系スマートフォンブランドとの契約は2025年後半に概ね完了し、中国系ベンダーとの交渉は旧正月明けの2月末に本格化する予定です。
PC/コンシューマー向けメモリ
PC DRAM契約価格は105-110%の上昇が予想され、これは事実上の価格倍増を意味します。主要OEMでさえ在庫水準の低下に直面し、交渉や調達計画での柔軟性が削がれている状況です。
情シスの予算・調達戦略への具体的インパクト
予算増額の試算方法
2026年予算では第1-第2四半期調達分についてDRAMコストの40-50%増加を見込む必要があります。50万円のサーバー調達において15%の価格上昇でも7.5万円の追加コストが発生するため、90-95%の価格上昇では予算の大幅見直しが不可避です。
中規模企業(エンドポイント500-1,500台)では、サーバーコスト25-30%増、PCコスト4-8%増により、総額40万-120万円の予算差異が発生する可能性があります。
調達タイミングの戦略的判断
現在、主要メーカーの見積有効期間が従来の30日から14日に短縮され、2026年初頭には7日まで短縮される可能性があります。Dell は4-6週間、Lenovo は6-8週間、HPは5-7週間の納期を要するため、発注スケジュールの厳格な管理が必要です。
メーカー別の生産能力動向と調達リスク
SK hynix:完売状態が継続
SK hynixは「来年のDRAM、NAND、HBM容量を完売した」と発表し、2026年まで製造枠が予約済みの状況です。同社は来年ほぼ新規受注を受けられない状態にあります。
Samsung:生産能力拡大も需要に追いつかず
Samsungは2026年に生産能力を約50%拡大する計画ですが、新工場P5施設の本格稼働は2028年の予定で、短期的な供給増加は期待できません。
Micron:コンシューマー市場から撤退
Micronは2025年12月にコンシューマー向けメモリ・ストレージ市場からの撤退を発表し、AIデータセンター向け顧客に注力する方針を明確化しています。
回復時期の見通しと長期戦略
DRAM価格は2026年第1四半期にピークを迎え、第3四半期から緩和が始まり、2027年後半から2028年初頭にかけて正常化するとみられています。Gartnerは2026年第3四半期にサーバー用DRAM価格が13%下落すると予測しているものの、Samsung、Micron、SK hynixの新設備が本格稼働するのは2027年後半から2028年であり、根本的な供給制約の解消には時間を要します。
専門家の多くは2026年後半まで価格安定の見通しを立てておらず、新工場の本格稼働が始まる2027年以降まで現在の状況が続くと警告しています。
情シスが今すぐ検討すべき3つのアクション
1. 緊急予算申請と複数シナリオ対応
- 2026-2027年のリフレッシュサイクルについて、楽観シナリオ(2026年第3四半期の価格緩和)、中間シナリオ(2026年第2四半期がピーク)、悲観シナリオ(2028年まで延期)の3つのシナリオプランニングを実施
- 現在の調達予算に対してDRAMコスト40-50%増を織り込んだ予算申請を準備
- 四半期ごとの価格変動リスクを考慮した調達スケジュールの見直し
2. 戦略的前倒し調達の検討
- 最も効果的な即効策として需要カーブの先を行く前倒し調達を検討し、12-18ヶ月のロードマップ分析を実施
- 確実に必要な容量は即座に調達し、投機的な成長購入は市況が明確になるまで延期
- RAMEXperts™のような60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門調達パートナーとの連携強化
3. 代替戦略とライフサイクル管理の見直し
- 50%リファービッシュ/50%新品機器のミックス戦略により、コストとケイパビリティのバランスを図る中間シナリオの検討
- DDR4とDDR5の価格差縮小を踏まえ、新しいIntel・AMDプラットフォームでのDDR5採用前倒しの評価
- 16-32GBでも十分動作する多くのワークロードを考慮し、最大メモリ容量追求よりもシステム全体価値の監視に注力
今回の価格急騰は単なる一時的な需給アンバランスではなく、AI需要による構造的変化です。情シス部門は四半期ごとの価格リセットを前提とし、メモリを戦略的で変動性の高いコモディティとして扱う新しいアプローチが必要となります。