2026年Q2 DRAM価格予測とは ― Q1に続く二桁%台の大幅高騰が濃厚
2026年4月10日時点で、DRAM市場は歴史的な価格高騰局面の真っ只中にある。TrendForceが2026年3月末に発表した最新調査によれば、2026年Q2(4〜6月)の汎用DRAM契約価格は前期比58〜63%の上昇が見込まれている。これは、Q1の90〜95%増という過去最大の四半期上昇率からはやや減速したものの、依然として極めて高い水準だ。NAND Flashの契約価格はQ2に前期比70〜75%の上昇と、DRAMを上回る加速を見せている。
DRAM契約価格とは、Samsung、SK hynix、Micronの3大メモリメーカーとOEM・CSP(クラウドサービスプロバイダー)間で四半期ごとに交渉される大口取引価格であり、サーバーやPC向けメモリの調達コストを左右する指標である。スポット価格(市場流通価格)とは異なり、企業の設備投資予算に直接影響する。
なぜここまで上がったのか ― AI/HBM需要の「玉突き影響」の構造
今回の価格高騰は、一時的な需給ギャップではなく、構造的な生産キャパシティの再配分によるものである。IDCは2026年2月のレポートで、この状況を「単なるサイクリカルな不足ではなく、世界のシリコンウエハー容量の恒久的かつ戦略的な再配分の可能性がある」と指摘している。
HBM(High Bandwidth Memory、高帯域幅メモリ)とは、AIアクセラレーター(NVIDIA GPU等)に搭載される高性能DRAMの一種であり、複数のDRAMダイを垂直に積層する構造を持つ。1GBあたりの製造に必要なウエハー面積は、標準的なDDR5の約3倍とされる。
この「3対1のトレードレシオ」が問題の核心だ。Micronは2025年12月の決算説明会で、顧客需要の55〜60%しか満たせていないと認め、メモリ供給逼迫は2026年以降も続くと警告した。さらにTrendForceの2025年12月報道によれば、AIは2026年にグローバルDRAMウエハー容量の約20%を消費する見通しであり、年間DRAM容量成長率がわずか10〜15%であることを考えると、PC・スマートフォン・汎用サーバー向けの供給圧迫は不可避である。
メーカー別の動向 ― Samsung・SK hynix・Micronの戦略比較
S&P Global Market Intelligenceの2026年1月のレポートによると、2026年の汎用DRAM ASP(平均販売価格)上昇率はメーカーによって大きく異なる。
- Samsung:汎用DRAM ASPが前年比116%上昇し、1ビットあたり$0.79と予測。HBM ASPの上昇率は約8%にとどまる
- SK hynix:汎用DRAM ASPが前年比78%上昇して$0.70。HBM ASP上昇率は約1%。SK hynixのHBM・DRAM・NAND容量は2026年分が「実質完売」状態
- Micron:汎用DRAM ASPが前年比54%上昇して$1.06。HBM ASPは約22%上昇。Micronは戦略顧客向けにウエハー供給を優先的に振り替えている
注目すべきは、3社ともHBMの価格上昇率が汎用DRAMに比べて格段に低い点である。これは、HBMがすでに高い価格水準にある一方で、汎用DRAMが供給圧迫により急速に「追い上げ」ている構造を示している。実際、Counterpoint Researchによれば、DDR4のスポット価格は1ギガビットあたり$2.10に達し、先端HBM3eの契約価格$1.70を上回るという「レガシー価格逆転現象」が発生している。
情シスの調達予算への影響 ― DDR5 64GB RDIMMは2025年初頭比で倍増の見通し
サーバーメモリの価格上昇は、企業のIT設備投資計画を直撃している。Counterpoint Researchの予測では、エンタープライズデータセンターで広く使用されるDDR5 64GB RDIMMモジュールの価格は、2026年末までに2025年初頭比で約2倍になる見通しだ。RDIMM(Registered DIMM)とは、サーバー向けにレジスタチップを搭載して信号の安定性を高めたメモリモジュールであり、ECC(Error Correcting Code)対応で信頼性が求められるサーバー・ワークステーションに標準的に使用される。
また、96GBや128GBなどの高密度モジュールでは、価格圧力がさらに強く、入手性も著しく低下している。J2 Sourcingが2026年3月中旬時点の情報として報告したところによれば、PC DRAMの契約価格はQ1に前期比105〜110%上昇し、事実上1四半期で2倍以上となった。HBMは2026年末まで完全にアロケーション(割当制)ベースでの販売となっている。
大口のDRAM発注では、リードタイムが40週を超えるケースも報告されている。2026年に予定されていたインフラプロジェクトが2027年や2028年に先送りされる事態も発生しており、情シス部門が設備投資計画を策定する際には、従来の「見積有効期間」の前提が通用しない状況にある。
DDR4とDDR5の選び方 ― 2026年の調達戦略における違い
DDR4からDDR5への移行判断は、2026年の調達環境においては「性能比較」以上に「リスク管理」の問題である。DDR4は相対的に価格安定性があるものの、Samsungが2025年夏にDDR4のEOL(End of Life、製品終了)計画を発表しており(既存のNCNR契約のため一時延期されているが)、長期的な供給可用性に不確実性がある。
EOL(End of Life)とは、メーカーが特定製品の製造・販売を終了することを意味し、情シスにとっては既存システムの保守部品確保やリプレース計画に直結する重要なイベントである。
一方でDDR5は、新しいサーバー・PCプラットフォーム(Intel・AMD最新世代)で標準採用が進んでおり、将来の互換性を確保できるが、価格変動リスクとコスト負担が大きい。短期的な増設・保守にはDDR4が現実的な選択肢となる場面もあるが、新規導入やリプレース計画ではDDR5への移行を前提とした設計が推奨される。DRAM専門の調達パートナーに在庫・互換性を確認することで、DDR4の保守用在庫とDDR5への段階的移行を両立させる戦略が立てやすくなる。
いつまで高いのか ― 価格正常化の見通し
複数の調査機関が一致しているのは、「2027年が最も可能性の高い回復開始年」という点である。TrendForceは、新規ファブ(半導体製造工場)の稼働による意味のあるキャパシティ拡大は2027年後半から2028年にかけてと予測している。Micronの米国ID1工場は2027年の稼働開始が見込まれ、SK hynixも韓国・利川および清州で2026〜2027年にかけて新たなDRAM生産ラインの増設を進めている。
ただし、業界の不確実要因も大きい。2026年3月25日にGoogleが発表したTurboQuantなどのメモリ圧縮技術は、推論時のメモリ消費を削減する可能性があるが、アナリストの多くは「ジェヴォンズのパラドックス(効率改善がかえって総需要を増加させる現象)」を指摘しており、短期的な価格下落材料とはなりにくいとの見方が優勢である。
SoftwareSeniの分析によれば、ベースケース(確率60%)ではQ3 2026に価格下落が始まりQ1〜Q2 2027にかけて生産量が20%以上増加して正常化が進む。ワーストケース(確率20%)では、AI基盤投資の持続によりHBM生産優先が続き、正常化は2027年末〜2028年初頭まで延びるとされている。
情シスが早急に検討すべき3つのこと
- 1. 予算バッファの確保と上長への早期報告:2026年度のサーバー・PC調達予算に、メモリコスト分として最低でも前年比50〜100%増の予算バッファを見込む。稟議資料にはTrendForceの「Q1 90〜95%増、Q2 58〜63%増」の数値を引用し、ファクトベースで説明する。価格正常化は2027年以降が基本シナリオであり、年度内の値下がりを前提とした予算策定はリスクが高い。
- 2. 調達タイミングの前倒しと納期確認:リードタイムが40週超に伸びている品目もあるため、下半期の増設・リプレース案件は今期中に発注を完了させることを検討する。既存ベンダーへの価格ロック期間・見積有効期間を確認し、アロケーション確保を優先する。DRAM専門の調達パートナーの活用も選択肢となる。
- 3. 既存資産の延命とDDR4在庫の戦略的確保:DDR4サーバー(Dell 14/15世代、HPE Gen10等)の延命が必要な場合、DDR4 RDIMM/LRDIMMの保守在庫を早期に確保する。Samsung DDR4のEOL動向を注視しつつ、DDR5プラットフォームへの段階的移行計画を策定する。BOM上のメモリ構成を棚卸しし、リスクの高い品目を特定しておく。
よくある質問
Q: 2026年にDRAM価格はいつ下がるのか?
A: TrendForce、IDC、TeamGroupなど複数の情報源が、価格正常化は2027年以降と見ている。2026年Q2がピーク価格帯となる可能性が高く、H2 2026から新規ファブの稼働により緩やかな安定化が始まるシナリオがベースケースだが、AI基盤需要の持続次第では2028年まで延びる可能性もある。年度内の値下がりを前提とした調達計画は推奨されない。
Q: DDR4とDDR5、今どちらを調達すべきか?
A: 既存DDR4プラットフォームの保守・増設にはDDR4の早期確保が合理的だが、SamsungがDDR4のEOL計画を発表済みであり、長期供給は不透明である。新規サーバー・PC導入ではDDR5を選択すべきだが、コスト増を予算に反映する必要がある。DDR4のスポット価格が1ギガビットあたり$2.10とHBM3eの契約価格$1.70を上回る「価格逆転」が発生しており、DDR4が割安という常識は2026年時点では通用しない。
Q: サーバー増設計画を延期すべきか?
A: 単純な延期は推奨されない。リードタイムが40週超に達する品目があり、延期すればするほど納期リスクと価格リスクの両方が増大する。むしろ、優先度の高い案件から順に発注を確定させ、アロケーションを確保する戦略が有効である。2026年Q2以降、NAND Flashの価格上昇(前期比70〜75%増)がSSDコストにも波及するため、ストレージを含めた総合的な調達計画の見直しが望ましい。