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Q. 2026年Q2にDRAM契約価格が前期比58〜63%上昇する見通し ― 情シスの調達戦略はどう変わるべきか? A. 長期契約の確保と調達先分散が必須、待機戦略はコスト増を招く

RAMEXperts™️ 編集部

AI/HBMがDRAM市場に与えている構造的影響とは

2026年4月12日時点で、DRAM市場は過去に例を見ない構造的な供給逼迫に直面している。HBM(High Bandwidth Memory)とは、AI用GPU・アクセラレーターに搭載される高帯域幅メモリであり、DRAM ダイを縦に積層して製造される。1GBのHBMを製造するために必要なウェーハ容量はDDR5の約3倍であり、AIインフラ需要がDRAM全体の製造キャパシティを大きく圧迫している。

TrendForceの最新価格調査によると、2026年Q2の汎用DRAM契約価格は前期比58〜63%の上昇が予測されている。Q1には前期比90〜95%という記録的な高騰が発生しており(TrendForce 2026年2月2日付改訂予測。当初の2026年1月5日付予測では55〜60%であったが、需給逼迫の深刻化を受け上方修正された)、上昇率自体はやや鈍化したものの、価格水準は引き続き上昇トレンドにある。TrendForceは2026年を通じて顕著な供給不足が継続し、新規ファブキャパシティが本格稼働するのは2027年後半から2028年になると予測している。

なぜ一般企業のDRAM調達が影響を受けるのか ― HBM需要の「玉突き効果」

今回のDRAM価格高騰は、単なる景気循環型の需給ギャップではない。IDCは「これは従来型のシクリカルな供給不足ではなく、世界のシリコンウェーハ容量の恒久的かつ戦略的な再配分である可能性がある」と分析している。Samsung、SK hynix、Micronの3社が世界のDRAM生産の95%以上を支配しており、各社ともクリーンルームと設備投資をAI向け高マージン製品に振り向けている。

この構造変化の核心は、ハイパースケーラー(Microsoft、Google、Meta、Amazon等)がメモリメーカーと長期供給契約を締結し、生産キャパシティを事実上「買い占め」ていることにある。Micronは2025年12月の決算説明会で、主要顧客の需要に対して55〜60%程度しか供給できていないと報告し、供給逼迫は2026年以降も持続する見通しを示した。

結果として、サーバーDRAMが優先的に供給を受け、PC用・モバイル用・コンシューマー向けDRAMの供給が絞られるという「玉突き」が発生している。TrendForceの報告によると、2026年にAI関連需要がグローバルDRAMウェーハ容量の約20%を消費すると推定されており、HBMの3:1ウェーハ変換比率を考慮すると、その実質的な影響はさらに大きい。

メーカー別の動向比較

メーカーHBM戦略汎用DRAM供給方針新規ファブ稼働時期
Samsung2026年にHBM容量50%増産計画、HBM4量産開始DDR4生産を2026年末まで延長。1a→1bノード転換で汎用DDR5/LPDDR5X増産を検討平澤P4拡張を加速中
SK hynixNVIDIAの主要HBMサプライヤー。先端パッケージングラインは2026年を通じてフル稼働DDR4生産は2026年Q1〜Q2に終了見込み。中国・無錫工場で一部DDR4増産利川・清州で拡張中、2026〜2027年に新規DRAM出力
MicronHBM4バリデーション完了・量産移行段階(2026年Q2本格化見込み)。FY26設備投資を180億ドルから200億ドルに拡大DDR4/LPDDR4のEOL通知を発行済み。Crucialコンシューマーブランドからの撤退を発表(2026年2月末で出荷終了)米国ID1ファブは2027年稼働予定

四半期別DRAM契約価格の推移 ― 2025年Q3から2026年Q2

調達予算の策定において、過去数四半期の価格上昇トレンドを把握することが不可欠である。以下に主要調査機関の報告をもとにした推移を示す。

四半期DRAM契約価格 前期比変動サーバーDRAM出典
2025年Q3+30〜50%同等Counterpoint Research / Kingspec
2025年Q4+40〜50%同等以上Counterpoint Research
2026年Q1+90〜95%(TrendForce 2月改訂予測。当初予測は+55〜60%)+約90%TrendForce(2026年2月2日付改訂) / Tom's Hardware
2026年Q2(予測)+58〜63%引き続き上昇TrendForce

注目すべきは、Q1に前期比90〜95%という過去最大級の上昇が記録された後もなお、Q2に58〜63%の追加上昇が見込まれている点である。Counterpoint Researchは2026年Q1にメモリ価格が約90%急騰したと報告しており、Enterprise Timesの4月8日付記事もこの数字を引用している。累積的な影響として、2025年Q3からの3四半期でDRAM調達コストは数倍規模に膨らんでいる。

DDR4のEOL(End of Life)問題 ― 情シスにとっての選び方と注意点

EOL(End of Life)とは、メーカーが特定製品の生産・販売を終了することを指す。DDR4については、大手3社すべてがEOL通知またはLTB(Last Time Buy=最終発注)の案内を進めている。

Micronは2025年半ばにDDR4/LPDDR4のEOL通知を顧客に発行し、最終出荷を2026年初頭としている。SamsungはDDR4生産を当初2025年末に終了する計画だったが、価格高騰を受けて2026年末まで延長した。SK hynixもDDR4生産を2026年Q1〜Q2まで継続するが、それ以降は段階的に終了する見込みである。

Sourceabilityのレポートによると、DDR4のスポット価格がDDR5を上回る「価格逆転」現象が2025年後半から2026年初頭にかけて発生しており、レガシーメモリの希少化が顕著である。情シスとしては、DDR4を搭載したサーバー・PCの台数を棚卸しし、DDR5移行のロードマップを策定する必要がある。

DDR5とは、DDR4の後継となる第5世代DDRメモリ規格であり、標準的なDDR5-4800はCL(CAS Latency)40、動作電圧1.1Vで、DDR4-3200(CL22、1.2V)と比較して絶対的なレイテンシ値は増加するが、実効帯域幅は約1.5倍に向上し、電力効率にも優れる。サーバー用途ではRDIMM(Registered DIMM)が標準であり、DDR5世代では1枚あたり最大256GBの大容量モジュールも登場している。

リードタイム延長と「待機戦略」のリスク

Enterprise Timesの2026年4月8日付記事によると、大口DRAM注文のリードタイムは現在40週を超えるケースが頻発しており、2026年に予定されていたインフラプロジェクトが2027〜2028年に先送りされる事態が報告されている。

SHIのリサーチハブは「価格の正常化を待つことは実行可能な戦略ではなく、リスクの高い賭けである」と明確に警告している。Sourceabilityの分析でも、四半期ごとの価格上昇(Q3に約30%、Q4に40〜50%、Q1にさらに90%以上)を先送りした組織は、累積的なコスト増大に直面していると指摘されている。

この環境下では、見積もりの有効期限が極めて短くなっている。メモリ市場では「時間単位の価格変動モデル」に移行しているとの報道すらある。調達計画においては、予算承認から発注までのリードタイムを可能な限り短縮し、複数ベンダーからの並行見積もり取得が求められる。DRAM専門の調達パートナーや専門商社を活用し、幅広い在庫ネットワークからの調達ルートを確保することも有効な選択肢となる。

サーバー・PCの増設・リプレース計画への影響

メモリコスト高騰は、情シスの設備投資計画に直接影響する。TrendForceの分析では、ノートPCのBOM(部品表)コストに占めるDRAM・NAND比率は従来10〜18%であったが、現在はさらに上昇しており、PCの実質価格上昇につながっている。大手PCメーカー各社はメモリコスト上昇に伴う製品価格の引き上げや仕様の見直しを進めている。

サーバー市場においても、DDR5 RDIMMの調達難がリプレースや増設のボトルネックとなっている。TrendForceの最新レポートによると、2026年Q2もDRAM供給はセグメント横断で逼迫しており、モバイルDRAMを先頭に契約価格が上昇している。サプライヤーの在庫は縮小を続けており、バイヤーは補充のために急いで調達を進めている状況にある。

2026年度の設備投資予算を策定するにあたっては、メモリコストの増分を少なくとも前年比50〜100%で見積もることが現実的である。承認済みの予算枠では不足する可能性が高く、早期の補正予算申請も視野に入れるべきだ。

いつ供給は正常化するのか ― 2027年後半以降の見通し

供給正常化の時期について、複数のアナリストが見解を示している。TrendForceは、新規ファブ容量が本格的にオンラインになるのは2027年後半から2028年であり、それまでは顕著な供給不足が継続すると予測している。MicronのID1ファブ(米国)は2027年稼働予定だが、Wccftechの取材によると、ファブ建設が供給に意味のあるインパクトをもたらすのは2028年以降になるとのことである。

SK Groupの崔泰源(チェ・テウォン)会長は「メモリチップ不足は2030年まで続く可能性がある」と発言しており、最も楽観的なシナリオでも2027年後半までは現在の逼迫環境が続くとみられている。一方で、2026年3月24日にGoogleが発表したTurboQuantのようなメモリ圧縮技術の登場は、AI推論ワークロードのメモリ消費効率を改善する可能性があり、長期的な需要見通しに変数を加えている。

情シスが早期に検討すべき3つのこと

  • 1. DDR4資産の棚卸しとDDR5移行ロードマップの策定:自社のサーバー・PCにおけるDDR4搭載台数を洗い出し、各メーカーのEOLスケジュール(Samsung: 2026年末、SK hynix: 2026年Q1-Q2、Micron: 2026年初頭)と照合する。DDR5移行に必要なプラットフォーム更新(CPU・マザーボード含む)のコスト試算と、LTBによるDDR4予備在庫の確保を並行で進める。
  • 2. 調達先の分散と長期契約の検討:大手3社への依存度を把握し、モジュールメーカーや専門調達パートナーを含めた複数ルートの確保を進める。見積もりの有効期限が急速に短縮している現状では、予算承認プロセスの短縮化も同時に実施すべきである。
  • 3. 設備投資予算の再精査と上長への報告:2026年度予算におけるメモリ調達コスト想定を最新の価格データ(Q2予測:前期比+58〜63%)で更新し、補正予算の必要性を経営層にファクトベースで報告する。リードタイムが40週超に延びているケースがあるため、下期のリプレース・増設計画は発注タイミングの前倒しを検討する。

よくある質問

Q: 2026年後半にDRAM価格は下がりますか?

A: 2026年4月12日時点で、主要アナリスト(TrendForce、IDC、Counterpoint Research)はいずれも2026年を通じて上昇基調が続くと予測しています。TrendForceは新規ファブの量産稼働が2027年後半〜2028年まで見込めないとし、価格の反転・調整は現時点の予測に含まれていません。ただし、上昇率自体はQ1の90〜95%からQ2の58〜63%へと鈍化しており、年後半にかけてさらにモデレートする可能性はあります。

Q: DDR4搭載サーバーの増設用メモリは今後も入手できますか?

A: 入手は可能ですが、難易度とコストが急上昇しています。Samsungは2026年末まで、SK hynixは2026年Q1〜Q2まで生産を延長していますが、Micronは既にEOL通知を発行済みです。DDR4のスポット価格がDDR5を上回る「価格逆転」が発生しており、特に産業用・高信頼性グレードの部品は入手困難になりつつあります。LTB対応や専門ディストリビューターからの調達を早期に手配することを推奨します。

Q: AI/HBM需要はいつまでDRAM市場を圧迫し続けますか?

A: TrendForceの報告では、2026年にAI関連需要がグローバルDRAMウェーハ容量の約20%を消費すると推定されています。HBM 1GBあたりのウェーハ消費量はDDR5の約3倍であり、AI需要の伸びとメモリ容量増加の両面から、圧迫は構造的・長期的なものです。SK Groupの崔泰源会長は不足が2030年まで続く可能性を示唆しており、短期的な解消は見込みにくい状況です。情シスとしては、AI需要との競合が常態化することを前提とした調達戦略を構築する必要があります。