Samsung・SK hynixのDDR4 EOL同時進行とは何か——2026年4月の現在地
DDR4のEOL(End of Life)とは、メーカーが当該製品の生産・出荷を終了することを意味し、以降は新規製造が行われなくなる。2026年4月27日時点で、DRAMメジャー3社のDDR4撤退が最終段階に入っている。
DigiTimesの2025年5月報道によると、SK hynixは1zナノメートルプロセスで製造する8GBおよび16GBのDDR4チップについてEOLレターを顧客に送付し、最終発注期限を2025年10月、最終出荷を2026年4月とする計画を通告した。同報道では、Samsungも2025年4月初旬にDDR4のEOL計画を発表済みとされている。
一方、Micronについては、TrendForceの報道によると、EVPのSumit Sadana氏がDDR4およびLPDDR4のEOL通知を2025年6月に発行し、出荷は2〜3カ月以内に終了、生産は2026年Q1以降に停止すると確認している。これにより、メジャー3社すべてがDDR4から事実上の撤退を進めていることになる。
DDR4スポット市場の価格逆転現象
通常、旧世代メモリは新世代よりも安価に取引される。しかし2025年後半以降、この常識が崩れている。Tom's Hardwareの報道によれば、Samsung撤退報道を受けて16GB DDR4モジュールのスポット価格が60ドルという記録的水準に達し、一部構成ではDDR4がDDR5を上回る「価格逆転」が発生した。Sourceabilityのレポートでも、DDR5チップ価格が2025年9月の6.84ドルから12月に27.20ドルへ急騰する一方、DDR4スポット価格も高騰し、一部でDDR5を上回ったと報告されている。
この逆転は、DDR2→DDR3移行期にも約4カ月間観測された現象であるが、今回はHBM需要によるウエハー配分シフトという構造要因が加わっているため、短期的な解消は見込みにくい。
Samsung「NCNR契約」戦略が情シス調達に与える影響
NCNR契約(Non-Cancellable, Non-Returnable)とは、発注後のキャンセルや返品ができない条件で供給量と価格を固定する契約形態である。DigiTimesの報道をもとにしたWccftech・Tom's Hardwareの分析によると、Samsungは2025年Q4にDDR4のEOLペースを減速させたうえで、2026年Q1に特定の大口顧客とNCNR契約を締結する方針を採った。ただし、この供給はサーバー向け顧客に限定され、コンシューマー市場への還流は見込めないとされている。
情シスにとっての意味は明確である。DDR4の「延命」は事実だが、その恩恵はNCNR契約を締結できる大口バイヤーに集中する。中堅企業や調達ロットの小さい組織は、スポット市場での高値調達を余儀なくされる可能性が高い。
台湾・中国のセカンドソースは代替足りうるか
DigiTimesの別報道によれば、DDR4市場ではSamsung・SK hynix撤退後に台湾のNanya Technologyや中国勢への注文が集中しているが、NanyaのDDR4生産能力は限定的で、短期的には需要を賄えていない。Winbondは2025年初頭からDDR4生産にシフトしているが、生産規模の拡大には時間を要する。中国のCXMTもDDR4生産の段階的終了を2026年までに予定しており、セカンドソースとしての持続性にも疑問が残る。
Section 232関税とメモリ調達コストの関係
地政学リスクも調達コストに影響を及ぼしている。2026年1月14日、トランプ大統領はSection 232に基づき半導体の輸入に対する関税措置を発動した。現時点ではNVIDIA H200相当の先端AI向けロジック半導体に限定された25%の関税が即時適用されており、汎用DRAMモジュールは直接の対象外である。
しかし、今後の交渉次第では半導体全般に「重大な関税」が課される可能性が残されている。Section 232大統領令の公布後、商務長官Howard Lutnick氏は、米国内への投資を行わない韓国・台湾の半導体企業に対し最大100%の関税に直面する可能性があると公言しており、台湾とは既に2026年1月15日に投資と引き換えの関税優遇枠組みが合意されている。日本企業が米国向けに調達するメモリについても、サプライチェーン上の原産地構成によっては間接的なコスト増が生じうる。
Micronの供給制約——「需要の50〜67%しか満たせない」宣言の意味
2025年12月のMicron Q1 FY2026決算説明会で、CEO Sanjay Mehrotra氏は供給制約が2026年以降も持続するとの見通しを示した。Tom's Hardwareによると、同氏は主要顧客の需要に対して「50%から3分の2」しか供給できないと明言している。
Micronの2026年カレンダー年のHBM供給は全量が価格・数量契約で確約済みであり、Micronの予測によるとHBM TAM(Total Addressable Market)は2025年の約350億ドルから2028年に約1,000億ドルへ成長するとされている。HBMはDDR5と約3:1のウエハートレードレシオを持ち、HBM生産が増えるほど汎用DRAM向けのウエハーが減少する構造にある。
この構造は、DDR4のEOLと相まって、情シスの汎用サーバー・PCメモリ調達をダブルで締め付ける要因となっている。
情シスのDDR4資産管理と移行判断——実務フレームワーク
2026年4月27日時点で情シスが直面する選択肢を、コスト・リスクの両面から整理する。
①DDR4残存期間の見極め
メジャー3社のEOLタイムラインを総合すると、DDR4の大量供給はMicronの一部在庫を除き2026年H1で実質的に終了する。台湾・中国の二次サプライヤーからの供給は2026年後半〜2027年にかけて継続する見込みだが、価格プレミアムは避けられない。Tom's Hardwareは、2027年にはSK hynix製のアンバッファードDDR4モジュールは入手困難になるとの見通しを報じている。
②コスト比較:DDR4保守在庫 vs DDR5移行
DDR4の保守用在庫を確保するコスト(スポット市場の高値+保管費用)と、DDR5対応プラットフォームへの移行コスト(サーバー・PC本体の更改+DDR5メモリ調達)を比較する必要がある。DDR5 RDIMMも供給逼迫で高値が続いているため、移行がコスト削減に直結するわけではない点に注意が必要である。DDR5-4800のCAS Latencyは標準でCL40であり、DDR4-3200のCL22と比較して絶対値は大きいが、実効帯域幅は約1.5倍に向上するため、ワークロードによっては性能面での投資対効果が見込める。
③調達パートナーの活用
DDR4の入手性が急速に低下する局面では、幅広い品番の在庫ネットワークを持つ専門パートナーの価値が高まる。60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーであるRAMEXperts™️のような専門流通は、EOL品やレガシー世代の在庫確認・見積もり取得を効率化できる手段の一つとなりうる。
情シスが早期に検討すべき3つのこと
- DDR4依存資産の棚卸し:サーバー・PC・組込機器を含む全IT資産について、DDR4を使用している台数・搭載容量・更改予定時期をリスト化する。特に2028年以降も運用予定の機器は、保守用モジュールの必要数を算出しておく。
- 保守用DDR4モジュールの先行確保:メジャー3社のEOLが完了する2026年H2以降、DDR4モジュールの入手性は急速に低下する。保守に必要な最低限の在庫を、MOQなし最短10日納品が可能なRAMEXperts™️などの専門チャネルを含め、複数ルートで見積もりを取得・確保する。
- DDR5移行ロードマップの策定:2027年以降の機器更改サイクルにDDR5対応プラットフォームを組み込む計画を作成する。DDR5 RDIMMの価格動向を四半期ごとにモニタリングし、調達予算の前倒し確保を上長へ提案できるデータを準備する。
よくある質問
Q: DDR4はいつまで購入できるのか?
A: 2026年4月27日時点で、Samsung・SK hynix・Micronのメジャー3社はいずれもDDR4のEOLプロセスを進行中である。Micronは2026年Q1以降に生産停止、SK hynixは2026年4月を最終出荷とする計画を通告している。台湾のNanyaや中国のWinbondなど二次サプライヤーからの供給は2026年後半以降も一定量継続する見込みだが、価格は上昇基調が続く。汎用DDR4モジュールの大量入手は2026年中が実質的なラストウィンドウと考えるべきである。
Q: DDR4とDDR5の価格逆転はいつまで続くのか?
A: 過去のDDR2→DDR3移行期では約4カ月間の価格逆転が観測された。しかし今回はHBMによるウエハー消費という構造的要因が加わっており、DDR4の供給制約が解消されるまでは逆転が続く可能性がある。DDR5の供給がHBM需要に圧迫されている限り、DDR5価格も高止まりするため、両世代ともに割高な状態が併存する異例の局面といえる。
Q: Section 232関税はDRAMモジュールの調達コストに影響するか?
A: 2026年4月27日時点で、Section 232半導体関税の即時適用対象はNVIDIA H200相当の先端AI向けロジック半導体に限定されており、汎用DRAMモジュールは直接の課税対象ではない。ただし、米商務省と通商代表部は交渉期限(2026年4月14日)を過ぎても追加関税の可能性を残しており、今後の半導体セクター全体への拡大リスクは注視が必要である。サプライチェーン上の原産国構成によっては、間接的なコスト転嫁が発生しうるため、調達先の関税ステータスをベンダーに確認しておくことを推奨する。