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価格動向

Q. 2026年7月にSamsungがQ3コモディティDRAM契約価格を最大+20%・LPDDRを+20%以上で交渉開始し3四半期連続の大幅値上げが確定的――情シスの累積コスト増(Q1:+90%→Q2:+50~60%→Q3:最大+20%)はどこで天井を打つのか? A. Raymond James等が2026年半ばにASPピークを予測し2027年初頭からの下落を示唆するが、LTAによる価格フロア形成で急落は限定的と見られ、情シスはQ4以降も+10~18%の追加上昇を前提に年度予算と調達ロットを再設計すべきである

RAMEXperts™️ 編集部

SamsungのQ3価格交渉とは――世界最大のコモディティDRAMメーカーが示す「価格の方向性」

2026年7月3日のTrendForce/ZDNet報道によると、Samsung Electronicsは2026年第3四半期(Q3)のコモディティDRAM契約価格について前四半期比最大+20%の値上げを顧客に提示し、LPDDR(LPDDR5X等を含む)についてはそれを上回る引き上げ幅で交渉を進めている。SamsungのDRAM ASP(平均販売価格)とは、同社が出荷するDRAMチップ全体の加重平均単価であり、市場全体の価格トレンドを先行的に示す指標として情シスの調達判断に直結する。

SamsungはDRAM市場において約38.5%のシェアを持つ最大手であり、特にコモディティDRAM(PC向けDDR5、モバイル向けLPDDR5X等)では同社の価格設定が市場全体の基準値となる。同社のASPはQ1に前四半期比+90%超、Q2に+50~60%と急騰しており、Q3の最大+20%はこの3四半期連続の値上げサイクルの「第3波」に位置づけられる。

3四半期の累積価格上昇はどれほどか――情シスの調達コストへの影響

DRAMの契約価格は四半期ごとに更新されるため、QoQ(前四半期比)の数字だけを見ると「減速している」と錯覚しがちである。しかし、累積で見ると景色は大きく異なる。

  • Q1 2026:QoQ +90%超(TrendForce/ZDNet報道)
  • Q2 2026:QoQ +50~60%(Samsung実績ベース、ZDNet報道)
  • Q3 2026:QoQ 最大+20%(Samsung交渉提示額)

仮にQ4 2025の契約価格を基準値100とすると、Q1終了時点で約190超、Q2終了時点で約285~304、Q3終了時点で約342~365となる。つまり2026年の9か月間でDRAMの契約単価は3.4~3.6倍に膨らむ計算である。サーバーBOM(部品表)のうちメモリコストが20~30%を占める構成では、サーバー本体の調達単価が最大で25~40%押し上げられることになる。

Tom's Hardwareが2026年7月時点で追跡しているリテール市場でも、DDR5メモリは「今日の市場で最も高価かつ重要なコンポーネントの一つ」となっている。リテール向け32GB DDR5キットは2025年後半の水準から概ね2~3.5倍に上昇しており、調達コストへの影響が顕著である。

なぜSamsungの値上げ幅はSK hynixより大きいのか

注目すべき構造的な差異がある。ZDNet報道によると、SamsungのDRAM ASP上昇率はSK hynixを上回っている。これは、SK hynixがHBM(High Bandwidth Memory=AIアクセラレータ向けの3Dスタック型高帯域メモリ)に生産リソースを重点配分しているのに対し、Samsungはコモディティ DRAM市場での支配的シェアを保持しているためである。コモディティDRAMは需給の変動に対する価格弾力性が高く、供給逼迫局面ではASPの上昇幅がHBMを上回る傾向がある。

SK hynixのHBM重視戦略は同社のプロダクトミックスを高単価・高利益率に偏らせる一方で、汎用DRAM市場におけるSamsungの価格決定力を相対的に強化している。情シスが調達するサーバー用RDIMM(Registered DIMM)やPC用DDR5 UDIMMは、まさにこの「Samsungの値上げが直撃する」コモディティ領域に位置する。

価格のピークはいつか――「天井」と「減速」の違い

Raymond Jamesのアナリスト Karl Ackerman氏は2026年6月に、DRAMおよびNANDのASPが2026年半ばにピークを迎え、2027年初頭から2四半期連続で下落に転じるとの予測ノートを公表した。このレポートは公開直後にMicronの時価総額を1日で約950億ドル押し下げ、韓国・台湾のメモリ株も連鎖的に下落した。

同氏の予測はASPの絶対価格が下落に転じるというものであり、単なる上昇率の減速にとどまらない。ただし、長期供給契約(LTA)の普及が価格の下支え要因となっており、過去のダウンサイクルほど急激な調整にはならないとの見方も示されている。Micronは直近の決算で16件のLTAを締結済みと開示しており、こうした合意が価格にフロア(下限)を設定する構造が形成されつつある。

TrendForceのQ3見通しでは、DRAM市場全体の契約価格上昇率はQoQ +13~18%に減速する。Samsungが最大+20%を提示しているのに対し、市場平均が+13~18%にとどまる差は、まさにSamsungのコモディティDRAMにおける価格リーダーシップを反映している。情シスにとっての実務的な示唆は、Ackerman氏の予測どおりにASPが2027年初頭から下落に転じるとしても、Q3~Q4にかけてはなお+10~18%程度の上昇が続く可能性が高いという点である。調達を先延ばしにしても短期的なコスト削減にはつながりにくい。

新たな価格リスク要因――USITC Section 337調査の影響とは

2026年7月15日、米国国際貿易委員会(USITC)はNetlist社の申立に基づき、DRAMデバイスおよびその構成部品に関するSection 337調査(調査番号337-TA-1511)を正式に開始した。Section 337調査とは、特許侵害品の米国への輸入を差し止める権限を持つ貿易救済手続であり、侵害が認定された場合には排除命令(Limited Exclusion Order)および輸入差止命令(Cease and Desist Order)が発出される。

Netlist社は2件の特許(US Patent No. 12,646,537および12,650,937)の侵害を主張している。被申立人にはSamsung Electronics Co., Ltd.、Samsung Electronics America, Inc.、Samsung Semiconductor, Inc.、Super Micro Computer, Inc.のほか、NVIDIA、Broadcom等を含む7社が指定されている。排除命令が発出された場合、対象DRAMデバイスの米国輸入が制限される可能性がある。USITCの救済命令は発出時点で即時有効であり、米国通商代表部(USTR)が60日以内に政策的理由で不承認としない限り確定する。

この調査は、別途報じられている米国の半導体関税政策(米国内でDRAMを生産しないメーカーに最大100%の関税を課す可能性)と併せて、情シスの米国拠点向けDRAM調達コストに追加的な上昇圧力をもたらし得るリスク要因である。現時点でMicronのみが米国内にDRAM生産拠点を有しており、SamsungおよびSK hynixは前工程の米国DRAM生産計画を発表していない。

情シスの調達予算モデルにどう織り込むか――累積上昇率の試算

以下は、情シスが上長への報告・稟議に使用できる簡易試算の枠組みである。

四半期QoQ上昇率(実績/予測)累積指数(Q4 2025=100)情報源
Q1 2026+90%超190超TrendForce / ZDNet
Q2 2026+50~60%285~304Samsung実績/ZDNet
Q3 2026(予測)+13~20%322~365TrendForce / Samsung交渉
Q4 2026(予測)+10~18%354~431アナリスト予測(7月時点)

Q4 2025を100とした場合、2026年度末の累積指数は最大で約4.3倍に達する可能性がある。仮にQ4 2025時点でサーバー1台あたりのメモリコストが2,500ドルであった場合、同一構成のQ4 2026時点のコストは約8,900~10,800ドルとなる。この差額は、100台規模のサーバーリフレッシュで6.4億円~8.3億円(1ドル=150円換算)の予算増に相当する。

60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーであるRAMEXperts™️のような専門ディストリビューターを活用することで、メーカー別・容量別の在庫状況と価格トレンドをリアルタイムで比較し、調達ロットの分割やタイミングの最適化に役立てることができる。

情シスが早期に検討すべき3つのこと

  • 1. 2026年度下期予算の再申請:Q3の最大+20%、Q4の+10~18%を織り込み、メモリ関連予算に累積で40~50%以上のバッファを確保する。稟議資料にはTrendForceのQoQ実績値とSamsungの交渉提示額を併記し、「ピーク予測」後もLTAによる価格フロアが形成されつつある点を明記する。
  • 2. 調達ロットの分割と前倒し:Q3契約確定前(8月上旬まで)に、必要量の50~60%を確保するファーストロットを発注する。残りの40~50%はQ3後半~Q4にかけて分割発注し、価格減速の恩恵を部分的に取り込む。MOQなし最短10日納品に対応する調達チャネルの確保も並行して進める。
  • 3. 米国拠点がある場合の関税・ITC調査リスクの棚卸し:USITC Section 337調査(337-TA-1511)ではSamsung等が被申立人に指定されている。対象製品範囲と、100%関税の適用可能性を法務・調達部門で確認する。Samsung製RDIMM・UDIMMが排除命令の対象に含まれる場合、Micron製品への切り替えまたは代替サプライヤーの評価を開始する。

よくある質問

Q: DRAMの価格上昇は2026年Q3で本当にピークを迎えるのか?

A: Raymond Jamesは2026年半ばのASPピークを予測しており、2027年初頭から2四半期連続の下落を見込んでいる。ただし、MicronのLTA16件に見られるように、長期契約による価格フロアが形成されつつあり、過去のDRAMダウンサイクルのような30~40%の急落は構造的に起きにくい環境にある。TrendForceの見通しでもQ3のQoQ上昇率は+13~18%と依然プラス成長であり、2026年7月19日時点では、価格の即時反転を前提とした調達の先延ばしは推奨されない。

Q: SamsungとSK hynixで調達先を切り替えると価格メリットはあるか?

A: 2026年Q3時点では、SK hynixはHBM生産を優先しているためコモディティDRAMの出荷余力が限られており、汎用DDR5 RDIMMの供給可用性はSamsungが相対的に高い。ただし、SamsungのASP上昇率がSK hynixを上回っている現状では、見積もり取得時にMicronを含む3社比較が不可欠である。とりわけ64GB RDIMM以上の高容量モジュールは供給が薄く、納期と価格の両面で複数ソースの確保が調達リスクの低減に直結する。

Q: USITC Section 337調査は情シスのDRAM調達にどう影響するか?

A: 2026年7月15日に開始された337-TA-1511調査は、Netlist社の特許2件に基づくDRAMデバイスの輸入差止請求であり、Samsung Electronics等7社が被申立人に指定されている。調査完了までに通常12~18か月を要するが、仮の排除命令(Temporary Exclusion Order)が発出された場合は即時に輸入制限が発生する可能性がある。情シスは自社が使用するDRAMモジュールのサプライチェーン(製造元・輸入経路)を棚卸しし、調査の進展を四半期ごとにモニタリングすべきである。