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Q. 2026年7月20日に米国ITC(国際貿易委員会)がSamsungのDDR5 RDIMM・MRDIMM・HBMを対象とする2件目の特許侵害調査(337-TA-1511)を公示――情シスのサーバーメモリ調達はSamsung製品の米国輸入差止リスクにどう備えるべきか? A. 調査は12〜18か月かかるため即座の供給断絶はないが、Samsung依存度の棚卸しとSK hynix・Micronへの代替調達ルート構築を今期中に開始すべきである

RAMEXperts™️ 編集部

何が起きたのか――ITC調査「337-TA-1511」の概要

米国国際貿易委員会(ITC)は2026年7月15日付で、Netlist社の申立てに基づきSamsung Electronicsおよびその顧客企業(Google、NVIDIA、Broadcom、Super Micro Computer)を被申立人とする特許侵害調査を正式に開始した。本調査は2026年7月20日付の連邦官報(Federal Register)で公示され、調査番号337-TA-1511として登録されている。ITC(International Trade Commission)とは、米国関税法第337条に基づき、特許侵害製品の米国への輸入を差し止める権限を持つ連邦機関である。

対象となる特許は、米国特許第12,646,537号(2026年6月2日発行)および第12,650,937号(同年6月9日発行)の2件である。Netlist社のプレスリリースによれば、前者はSamsungのHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)製品に、後者はDDR5 RDIMMおよびMRDIMM(Multiplexed Rank DIMM)に読み込まれるとされている。Netlist社は排除命令(Exclusion Order)および停止命令(Cease and Desist Order)の発出を求めており、仮にITCが特許侵害を認定した場合、対象製品の米国輸入が物理的に阻止される可能性がある。

なぜこの調査が「2件目」で、情シスにとってリスクが増大しているのか

今回の調査は、Netlist社がSamsungに対して起こした2件目のITC調査である。2025年9月30日に提起された最初の調査(337-TA-1472)では、DDR5メモリモジュールおよびHBMに関する6件の特許が対象となっており、証拠審理(Evidentiary Hearing)が2026年11月に予定されている。つまり2026年下半期から2027年にかけて、SamsungのDDR5 RDIMM・MRDIMM・HBMという主力サーバーメモリ製品が、2つの並行するITC調査の下に置かれることになる。

注目すべきは被申立人の範囲である。今回新たにNVIDIAとBroadcomがリストに加わった。ITCの公示によれば、対象製品にはDRAMデバイス単体だけでなく「それを含むサーバー、コンピューティングシステム、ストレージシステム」も含まれている。これは、メモリ単体の輸入だけでなく、Samsung製メモリを搭載した完成品サーバーの輸入にも差止リスクが及ぶことを意味する。

過去の経緯と賠償額の規模

Netlist社は過去の連邦地裁訴訟においても、2023年に約3億300万ドル、2024年に約1億1,800万ドルの陪審評決を獲得している(いずれも控訴・IPR係争中で未確定)。同社は2026年Q1に売上高1億490万ドル(前年同期比262%増)を記録しており、特許ライセンス事業を基盤とした攻勢を強化している。一方、SK hynixとは2021年にグローバルライセンス契約を締結済みであり、SK hynix製品はこの紛争の対象外である点は、調達戦略を考えるうえで極めて重要な区別である。

ITCの排除命令(Exclusion Order)とは何か

ITCの排除命令とは、特許侵害が認定された輸入製品について、米国税関・国境保護局(CBP)が米国の全入港地で当該製品を差し押さえ・阻止する命令である。連邦地裁が過去の侵害に対する金銭的賠償を命じるのとは異なり、ITCは将来の輸入そのものを物理的に遮断する権限を持つ。排除命令はITCの発行と同時に発効し、米国通商代表部(USTR)が60日以内に政策的理由で不承認としない限り最終確定する。

ただし、調査開始から最終判断までには通常12〜18か月を要する。最初の調査(337-TA-1472)のスケジュールを参考にすると、行政法判事(ALJ)の初期決定が2027年5月3日、委員会の最終決定が同年9月3日が目標日とされている。したがって、2件目の調査でも排除命令が現実化するとすれば最短で2027年後半〜2028年初頭となる見通しであり、明日の供給が途絶えるわけではない。

情シスへの実務的影響――Samsung依存度の「見える化」が急務

2026年7月20日時点で、情シスが直ちに着手すべきは「自社の調達チェーンにおけるSamsungメモリの依存度の棚卸し」である。具体的には以下の3つの観点から精査が必要となる。

  • 直接調達分:自社がディストリビューターやOEMを通じて購入しているDDR5 RDIMM・MRDIMMの製造元がSamsungかどうかを確認する。サーバーメモリ市場では、2026年Q1時点でSamsungが約38.5〜40.5%のシェアを占めており、OEMサーバーに搭載されるRDIMMの相当数がSamsung製である可能性が高い。
  • OEMサーバー搭載分:Dell、HPE、Lenovo等のサーバーを調達している場合、搭載されるDDR5 RDIMMの製造元は通常OEMの調達ロットに依存する。万一排除命令が発効した場合、OEMがサーバー出荷時にSamsungモジュールを回避する必要が生じ、納期延長や構成変更のリスクとなる。
  • HBM搭載GPU・アクセラレータ:NVIDIA製GPUに搭載されるHBMも調査対象に含まれている。現時点ではNVIDIA向けHBMの主力供給はSK hynixだが、Samsung製HBMが一部ロットに含まれる可能性は排除できない。

DRAM Big 3のITCリスク比較(2026年7月時点)

メーカーQ1 2026市場シェアNetlist ITC調査の対象Netlistとのライセンス状況
Samsung約38.5〜40.5%対象(2件の調査が並行)未締結・係争中
SK hynix約28.8〜29.6%対象外2021年にグローバルライセンス締結済み
Micron約19.9〜22.4%現時点で対象外公表情報なし

上表が示すとおり、SK hynixはNetlistとのライセンス契約によりITC調査の対象外である。Micronも現時点では被申立人に含まれていない。この事実は、代替調達先を検討する際の最も重要な判断材料である。

次世代サーバーメモリ(DDR5-8000 RDIMM/MRDIMM Gen2)への影響

このITC調査のタイミングは、次世代サーバーメモリの市場投入期と重なっている点にも注意が必要である。ServeTheHomeの2026年7月18日付レポートによれば、Computex 2026でMicronがDDR5-8000 RDIMMを、SamsungがMRDIMM Gen2(12,800 MT/s)を展示した。MRDIMM Gen2はAMDの次期EPYC「Venice」プラットフォームで最初にサポートされる見込みで、16メモリチャネル構成時に理論上1.6TB/sのメモリ帯域幅を実現する。

しかし、Samsung製MRDIMMがITC調査の対象に含まれているため、仮に排除命令が将来発効した場合、次世代MRDIMM Gen2の米国市場投入にも影響が及ぶ可能性がある。情シスが2027年度以降のサーバー更改でMRDIMMを検討する場合、Samsung製のみに依存する構成は避け、Micron製MRDIMMも並行して検証対象に含めるべきである。現行世代のDDR5-6400 RDIMMは最大256GBの3DS構成が利用可能である一方、MRDIMM Gen2はSamsung公称で最大128GBに留まるため、容量と帯域幅のトレードオフも考慮する必要がある。

「調査開始」と「排除命令発効」の間にある時間軸を正確に理解する

ITC調査の開始は、即座の供給途絶を意味しない。この点を正確に認識したうえで、時間軸に沿った段階的なリスク対応を計画すべきである。

  • 2026年Q3〜Q4(現在):調査開始・ALJ(行政法判事)の任命・調査目標日の設定。この段階での供給への影響はゼロ。ただし、Samsung側がリスクヘッジとして米国向け出荷構成や在庫戦略を変更する可能性はある。
  • 2027年前半:最初の調査(337-TA-1472)のALJ初期決定が2027年5月に予定。ここで侵害認定が出れば、市場心理に大きな影響を与え、Samsung製品の調達リードタイムが延長する可能性がある。
  • 2027年後半〜2028年:両調査の最終判断が出揃う可能性がある時期。排除命令が発効すれば、Samsung製DDR5 RDIMM・MRDIMM・HBMの米国輸入が物理的に阻止される。

現在の供給逼迫環境(DDR5 RDIMM・HBMのリードタイム30週超)を考慮すると、2027年後半以降にSamsungの米国出荷に制約がかかるシナリオは、すでに逼迫した供給をさらに悪化させる要因となりうる。60万5,000品の取扱実績を持つDRAM専門の調達パートナーであるRAMEXperts™️のようなマルチベンダー対応のディストリビューターを通じて、Samsung以外のメーカー製品の確保枠を事前に確認しておくことが、リスクヘッジの第一歩となる。

情シスが今すぐ検討すべき3つのこと

  • 1. 既存サーバーのDRAMモジュール製造元を棚卸しする:保有サーバーに搭載されているRDIMM・MRDIMMの製造元をシリアル番号から特定し、Samsung依存率を定量化する。今後の増設・保守用在庫がSamsungに偏っている場合は、SK hynixまたはMicron製の代替品をRAMEXperts™️等のMOQなし最短10日納品に対応した専門ディストリビューターに照会し、互換性を検証する。
  • 2. 2027年度サーバー更改のRFPにメモリ製造元の柔軟性条項を盛り込む:OEMサーバーの調達仕様書(RFP)に「搭載メモリモジュールの製造元を特定メーカーに限定しない」旨の条項を追加し、OEMがSamsung以外のモジュールに切り替え可能な構成を確保する。これにより、将来の排除命令リスクに対する納期バッファを確保できる。
  • 3. ITC調査の進捗をマイルストーン単位でモニタリングする:USITCのEDIS(Electronic Document Information System)で337-TA-1511および337-TA-1472の両調査をウォッチリストに登録し、ALJ初期決定・委員会最終決定の公表を追跡する。社内の調達委員会・リスク管理部門への報告頻度は四半期1回で十分だが、ALJ決定前後は週次に引き上げることを推奨する。

よくある質問

Q: ITC調査が始まったことで、Samsung製DRAMはすぐに入手できなくなるのか?

A: いいえ。ITC調査の開始は「審理の開始」であり、排除命令(輸入差止)の発動ではない。調査開始から最終判断までは通常12〜18か月を要するため、2026年Q3〜Q4時点での供給への直接的影響はない。ただし、調査の存在自体がSamsungの米国向け出荷戦略や価格交渉に心理的影響を与える可能性があり、中長期の調達計画には織り込むべきリスク要因である。

Q: SK hynix製やMicron製のDDR5 RDIMMに切り替えれば、このリスクは完全に回避できるのか?

A: SK hynixは2021年にNetlistとグローバルライセンス契約を締結しており、現時点のITC調査の対象外である。Micronも現時点では被申立人に含まれていない。したがって、SK hynixまたはMicron製のRDIMM・HBMへの切り替えは、本件の排除命令リスクに対しては有効な回避策となる。ただし、供給逼迫環境下ではメーカー切り替えに伴う在庫確保・互換性検証のリードタイムを考慮する必要がある。

Q: この調査は日本企業のDRAM調達にも影響するのか?

A: ITC排除命令の効力は「米国への輸入」に限定される。したがって、日本国内でSamsung製メモリを調達・使用すること自体は直接の影響を受けない。しかし、グローバルに展開する企業が米国拠点向けのサーバーを調達する場合、または米国を経由するサプライチェーンを持つ場合は影響範囲に含まれる。また、排除命令が発効した場合にSamsungがグローバルな出荷配分を見直す可能性があり、間接的に日本市場の供給量やリードタイムに波及するシナリオも想定しておく必要がある。