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市場動向

Q. 2026年7月のIBM決算で顧客のメモリ前倒し購入が四半期売上未達を招く――この玉突きは情シスの年度IT予算をどう変えるか? A. ハード費増がソフト・SaaS予算を侵食し予算配分の再設計が要る

RAMEXperts™️ 編集部

2026年7月のIBM決算が示した「メモリ玉突き」とは

2026年のメモリ不足は、サーバーやPCのハードウェア価格を押し上げるだけでなく、企業のIT予算配分そのものを「ハード優先・ソフト後退」へと動かし始めた。その市場シグナルが、2026年7月14日にIBMが公表した第2四半期(Q2)の暫定決算である。売上は172億ドルで前年同期比プラス1%にとどまり、市場予想の178.6億ドルを下回った。調整後EPSも2.93ドルと予想の約3.02ドルに届かず、株価は同日に約25%下落して1日の下落率としては過去最大級となり、時価総額は約670億ドルが消えた。

玉突き影響とは、ある製品の需給変動が、直接は関係しない別の支出分野にまで波及する現象を指す。IBMのアービンド・クリシュナCEOは「6月下旬の数週間で、顧客が四半期の設備投資(capex)をサーバー・ストレージ・メモリの購入へ振り向けるのを見た」と説明した。値上げ前に確保しようとする前倒し調達が、ソフトウェアやコンサルティングの支出を押しのけた形だ。実際、IBMの分散型インフラ事業は前年同期比プラス37%と過去最高の伸びを示し、約5億ドルの受注残を抱えた一方、ソフト・インフラ部門が全体の未達を招いた。

なぜハード費の増加がソフト・SaaS予算を侵食するのか

結論として、年度のIT予算はおおむね固定枠であり、ハードが急騰すれば同じ枠内でソフトウェア・SaaS・更新プロジェクトが削られるからだ。デロイトが2026年7月28日に公表した分析は、この圧力が一過性でないことを示す。AIサーバー向けDRAMの価格は2026年Q1に約2倍となり、通年では約4倍に達すると予測。メモリはAIサーバーのラック原価の約4分の1を占め、増産投資が実る新規供給は2029〜2030年まで本格化しないとされる。

HBM(High Bandwidth Memory、DRAMを積層した広帯域メモリでAIアクセラレータに使われる)への容量転換が、汎用サーバーメモリの供給を構造的に細らせている。デロイトはこの状況を「RAMageddon(ラマゲドン)」と呼び、メモリ売上は2025年の約2,300億ドルから2027年に1兆ドルを超え、2026年にはメモリ関連capexが半導体業界全体のcapexの約半分を占めると見込む。Micronの直近の売上高が前年同期比プラス346%に達したことも、需要側の逼迫を裏づける。つまり2026〜2027年にかけて、情シスの予算はメモリ起点のコスト増と繰り返し向き合うことになる。

2026年のメモリ不足は、ハードウェアの価格問題にとどまらず、企業の年度IT予算配分を「ハード優先・ソフト後退」へと構造的に変える段階に入った。

見積もり後に値上げされる調達環境の変化とは

2026年8月2日時点で、メーカー・ベンダー側の商慣行も変わっている。Dellのジェフ・クラークCOOは2026年5月28日の決算説明会で「ほぼ毎日、値付けし直している感覚だ」と述べた。HPEは見積もり提示から出荷までの間にコモディティ価格が上がった場合、既存注文を再値付けできるよう見積もり条件を改定し、メモリ・ストレージ価格の高止まりが2027年まで続くとの見通しを示した。DigiTimesも2026年7月31日、契約価格の上昇が下期の電子機器市場全体に波及すると報じている。

RDIMM(Registered DIMM、サーバー向けに信号を安定化したメモリモジュール)を中心に、発注量に対する充足率は約70%にとどまり、標準モジュールのリードタイムは30〜40週超に及ぶ。HPEが見積もりの有効期限(コミットメント期間)を短縮するなど、見積もりの提示条件も変化している。従来と2026年の調達環境の違いは以下のとおり。

項目従来(〜2024年)2026年の調達環境
見積もり有効期限数週間〜30日大幅に短縮
発注充足率ほぼ100%約70%
標準モジュールの納期数週間30〜40週超
価格の確定タイミング発注時に固定出荷時に再値付けの条項あり

情シスへの影響と次にとるべきアクション

要点は、メモリ争奪がもはや「ハード費だけの問題」ではなく、年度IT予算の配分設計を迫る段階に入ったことだ。ハードを前倒しで確保すれば値上げは回避できるが、その原資はソフト・SaaS・更新プロジェクトから捻出され、資金も長期間拘束される。全案件を前倒しするのではなく、更改必須のハードだけを優先し、ソフト側は複数年契約で単価をロックする、といった選別が必要になる。

  • 予算配分の棚卸し:年度IT予算のハード/ソフト比率を可視化し、メモリ急騰分を織り込んだ再配分シナリオを作る。前倒し調達でSaaS・更新予算がどれだけ圧迫されるかを金額で示す。
  • 契約条項の確認:見積もりの有効期限と「出荷時再値付け」条項の有無を精査し、発注から納品までの価格変動リスクを条項ベースで把握する。
  • 前倒しの是非を数値で判断:想定価格上昇率と資金拘束・在庫保管コストを比較し、前倒しが得になる案件を切り分ける。ソフト側は複数年契約で単価を固定する。

Q: メモリ価格が上がると、なぜソフトウェアやSaaSの予算まで削られるのですか?

A: 年度IT予算は総額の枠が決まっていることが多く、サーバーやメモリなどハードの価格が急騰すると、同じ枠内でソフトウェア・SaaS・コンサルティングなどの支出を削って原資を捻出せざるを得ないためです。2026年7月のIBM決算では、顧客がこの原資移動を実際に行ったことがソフト部門の未達要因として説明されました。

Q: 今、サーバー調達を前倒しすべきですか?

A: すべてを一律に前倒しする必要はありません。想定される価格上昇率と、前倒しで発生する資金拘束・在庫コストを比較し、更改が避けられない案件のみ優先確保するのが現実的です。デロイトは供給逼迫が2029〜2030年まで続くと見ており、複数年での計画的な分割調達が選択肢になります。

Q: 見積もりを取ったのに、納品時に値上げされることはありますか?

A: あり得ます。HPEは見積もりから出荷までの間の部材価格上昇分を既存注文に反映できるよう条件を改定しており、Dellも「ほぼ毎日値付けし直している」と述べています。発注前に有効期限と再値付け条項を必ず確認してください。