2026年10月24日時点の状況——最大顧客NVIDIAが「2029年の過剰供給」説を否定
結論から言えば、メモリ需要の最大の担い手であるNVIDIAは、市場が警戒する2029年の供給過剰を否定している。同社のJensen Huang CEOは2026年10月22日、ドイツ・ベルリンで開催されたGTCでCNBCの取材に応じ、「2029年までメモリの過剰供給の兆候は見られない」と述べた。Huang氏は「メモリの素晴らしい点は、常にもっと使えることだ」と語り、HBMとLPDDRの長期需要が継続するとの見方を示した。
この発言は、一部の専門家が「2029年には新規供給が積み上がり、メモリ市場が供給過剰に転じる」と予測したことでメモリ関連株が下落した直後に出たものである。つまり、供給側の増産懸念に対して、最大の買い手が需要側から反論した構図になる。情シスにとって重要なのは、株価の上下ではなく、この需要シグナルが自社の調達計画の前提をどう変えるかである。
NVIDIA自身の数字が示す需要の厚み
Huang氏の発言は定性的だが、NVIDIAの決算数値は需要の厚みを裏づけている。報道によれば、直近四半期(FY2027 Q2)の売上高は962億ドルで前年同期比106%増、うちデータセンター部門は890億ドルで同117%増に達した。将来の調達を示す購入契約残(purchase commitments)は2,790億ドルと、前四半期から2倍超に膨らんでいる。さらにNVIDIAのCFOは、メモリの供給制約が2028年1月(FY2028末)まで成長に影響し、HBMの逼迫が少なくともその時期まで続くとの見通しを示した。
| 項目 | 数値 | 出典上の時点 |
|---|---|---|
| NVIDIA 売上高 | 962億ドル(前年比+106%) | FY2027 Q2 |
| データセンター売上 | 890億ドル(前年比+117%) | FY2027 Q2 |
| 購入契約残 | 2,790億ドル(前四半期比2倍超) | FY2027 Q2 |
| メモリ逼迫の影響期間 | 2028年1月(FY2028末)まで | NVIDIA CFO見通し |
LPDDRとは何か——データセンター転用が一般調達に与える影響
今回の発言で情シスが見落とせないのが、LPDDRへの言及である。LPDDRとは、スマートフォンやノートPCなど低消費電力機器向けに最適化されたDRAM規格で、省電力性を重視した設計が特徴である。Huang氏は、NVIDIAがこのLPDDRをデータセンターに持ち込み、競合解の半分の消費電力を実現したと説明し、今後も豊富なLPDDR供給に依存していく考えを示した。
これは、従来はモバイル・クライアント機器向けが中心だったLPDDRが、AIサーバー需要の射程に入ったことを意味する。HBMがDRAM生産能力を侵食する玉突き(供給の押し出し)に加え、LPDDRでも需要の競合が起きれば、ノートPCや薄型端末の増設・更改に使うメモリの確保が難化する可能性がある。サーバー向けDDR5に限らず、クライアント機の調達も逼迫前提で見積もる局面に入りつつある。
「値下がりを待つ」戦略の見直し——需要側シグナルの読み方
2026年10月24日時点で、メモリ需要の最大の担い手であるNVIDIAは、2029年までの供給過剰を否定し、HBMとLPDDRの長期需要を構造的なものと位置づけている。これは、近い将来の大幅な値下がりを前提に調達を保留する戦略に対して、慎重な見直しを促すシグナルといえる。
ただし、2029年以降の需給は複数の変数に左右され、不確実性が残る。Huang氏は中国のCXMT(長鑫存儲)との協業について「オープンな姿勢」を示し、中国の製造能力を高く評価した。中国勢の増産が軌道に乗るかどうかは供給構図を動かす要素だが、その反転時期は出典でも明示されていない。情シスとしては、「いずれ下がる」という楽観に賭けるより、逼迫が続く前提で発注枠と予算を押さえる方が、少なくとも2028年初頭までの計画としては妥当性が高い。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 一般DRAM・LPDDR調達枠の確保時期:サーバー向けDDR5だけでなく、LPDDR搭載のクライアント機も含め、2027年〜2028年初頭(FY2028末=2028年1月)まで逼迫が続く前提で発注枠を確保する。
- 「値下がり待ち」の再検討:値下がりを前提にした購入保留は、最大顧客の需要シグナルと逆行する。見積もりの有効期限・納期・価格改定条件を確認し、保留のコストを定量化する。
- LPDDR依存機器の棚卸し:ノートPCや薄型端末などLPDDR搭載機の更改計画を前倒しで検討し、搭載容量・互換性・入手性を確認しておく。
よくある質問
Q: NVIDIAのCEO発言で一般DRAM価格はすぐに下がりますか?
A: 出典では、NVIDIAのCFOがメモリ逼迫は2028年1月(FY2028末)まで成長に影響すると説明しており、近い値下がりは示されていない。むしろ需要側は供給過剰を否定している。
Q: LPDDRがデータセンターに使われると、ノートPCのメモリ調達に影響しますか?
A: LPDDRがAIサーバー需要の射程に入るため、クライアント機のメモリ調達も逼迫前提で考えるのが妥当である。更改計画の前倒し検討が有効となる。
Q: 2029年に供給過剰で安くなる可能性はありますか?
A: 一部の専門家は2029年の供給過剰を予測したが、NVIDIAはこれを否定している。反転時期は複数の変数に左右され、出典でも断定されていない。