2026年8月、DRAM高は「サーバー」から「社員PC」へ波及した
2026年8月18日時点で、DRAM不足の影響は情シスが日常的に調達する社員向けPC本体へと広がっている。DRAM(Dynamic Random Access Memory)とは、PCやサーバーが処理中のデータを一時的に置く主記憶で、CPUやSSDと並ぶ主要部材である。HPの最高財務責任者(CFO)は、メモリがPC1台の部材コスト(BOM=Bill of Materials、部品表原価)の約35%を占めると説明した。これは危機前の15〜18%からほぼ倍増した水準である。
Dell、HP、Lenovo、ASUS、Acerといった大手は、法人向けPCで15〜20%、メモリ搭載量の多い構成では最大30%の値上げを相次いで通知している。サーバーメモリの逼迫はこれまでも繰り返し報じられてきたが、今回のポイントは、逼迫の波が高額なサーバーだけでなく、1人1台の端末(クライアントPC)の調達単価と稟議額に直接効き始めた点にある。
メモリが部材コストの約35%へ――PC値上げの構造とは
結論から言えば、今回のPC値上げは一時的な便乗値上げではなく、部材原価の構造変化に基づくものである。メモリ価格は2026年Q1に前四半期比約95%、Q2に約63%上昇し、2025年初からは約3倍の水準にある。半導体各社がAIサーバー向けの高採算なHBM(High Bandwidth Memory、AIアクセラレータ向けの広帯域メモリ)へ生産を振り向けた結果、PC・スマホ向けの汎用DRAMやLPDDR5の供給が細り、単価が跳ね上がった。
この原価上昇が端末価格を押し上げる。調査会社Gartnerは、2026年のPC平均価格が前年比約17%上昇し、世界PC出荷台数は約10.4%減少すると予測する。さらに同社は、メモリ高が続けば500ドル未満の低価格PC帯が成り立たなくなり、2028年までに事実上消滅する可能性を指摘している。情シスにとっては「同じ機種を同じ予算で買い替える」という前提が崩れつつある、と読み替えるべきだ。
「発注しても現行価格は固定されない」――調達実務への影響
情シスの実務で最も影響が大きいのは、価格そのものより見積りと発注の運用変更である。Dellは法人顧客に対し「将来納品分を今日発注しても、現行価格は固定されない(ordering today for future delivery does not lock in current pricing)」と明言し、メモリ価格の変動を「自社の制御外(out of our control)」と説明した。同社COOのジェフ・クラーク氏は、メモリコストの上昇ペースを「前例がない(unprecedented)」と述べている。
部材流通の現場でも同様だ。ある供給パートナーは2026年8月時点で、DRAM価格が年末まで月10〜20%のペースで上がる可能性を織り込むよう顧客に助言し、見積りの有効期間は最短72時間、リードタイムは製品により8〜52週間に達すると報告している。参考として、Dellは2025年12月17日実施の値上げで、32GB構成のPro/Pro Maxを1台あたり約130〜230ドル、128GB構成を約520〜765ドル引き上げた。つまり「相見積り→稟議→発注」に数週間かける従来運用では、承認が下りる頃には見積りが失効している事態が現実になっている。
主要な数値(2026年8月時点)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| メモリのPC部材コスト比率 | 約35%(危機前は15〜18%) |
| 大手の法人PC値上げ幅 | 15〜20%(メモリ多搭載は最大30%) |
| 見積りの有効期間 | 最短72時間(短縮傾向) |
| リードタイム | 8〜52週間(製品による) |
| DRAM価格上昇(前四半期比) | Q1 約+95%、Q2 約+63% |
| 2026年PC平均価格(前年比) | 約+17%(Gartner予測) |
| 業務用PCの利用期間 | 2026年末までに約+15%(Gartner予測) |
PC更改を延期すべきか――2026〜2027年の見通し
「値上げが続くなら買い替えを遅らせて待つ」という判断は一見合理的だが、緩和の時期は後ろ倒しになっている。最新の状況として、2026年8月時点で供給側は年末までの追加上昇を示唆し、一部カテゴリーは想定より強い上げ幅になっている。今後の見通しとして、複数のアナリストは意味のある価格緩和は早くて2027年後半〜2028年とみており、2026年内の反落は想定しにくい。
実際、Gartnerは2026年末までに業務用PCの利用期間が約15%延びると予測しており、企業が更改を先送りして端末を延命させる動きは既に進んでいる。ただし延命はWindowsのサポート期限やOSアップグレード要件、保守切れ・故障率上昇とのトレードオフになる。延期そのものが「待てば安くなる」保証にはならない点を、稟議では明確に区別して説明したい。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 見積りの有効期間と発注運用を見直す:見積りが72時間〜数日で失効し、発注しても価格が固定されない前提で、承認フローを短縮する。予算は2026年内は+15〜30%のレンジで組み、必要台数は早期に確定発注する。
- 構成(メモリ・SSD容量)を役割ごとに最適化する:メモリが部材の約35%を占める今、全機種を最大構成で揃えると値上げの直撃を受ける。業務要件に応じてRAM/SSD容量を右サイズ化し、標準構成を絞ってボリュームで調達する。
- 更改時期を「価格」と「サポート期限」の両にらみで再設計する:Gartnerが示すように延命は選択肢だが、OS・保守・故障率の期限と天秤にかける。延期する場合も、緩和は早くて2027年後半〜2028年見通しである点を前提に、複数年の調達・予算計画へ落とし込む。
よくある質問
Q: 今のうちに大量発注すれば、現在価格でPCを確保できますか?
A: 確保できるとは限りません。Dellは「将来納品分を今日発注しても現行価格は固定されない」と明言しており、見積りの有効期間も最短72時間程度まで短縮しています。数量枠の確保にはなり得ますが、価格は納品時点で再計算される前提で予算を組む必要があります。
Q: PCリプレースを2027年まで延期すれば安く買えますか?
A: 2026年8月時点の見通しでは、意味のある価格緩和は早くて2027年後半〜2028年とされ、2026年内の反落は想定しにくい状況です。延期は選択肢ですが、Windowsのサポート期限や故障率上昇とのトレードオフになるため、「待てば安くなる」前提での延期は避け、期限と天秤にかけて判断してください。
Q: サーバーメモリの逼迫と社員PCの値上げは別の話ですか?
A: 同じ原因です。半導体各社がAI向けHBM・サーバーDRAMへ生産を優先配分した結果、PC・スマホ向けの汎用DRAMが不足し、端末の部材原価が上昇しています。サーバーとクライアントの調達計画は、同じメモリ逼迫を前提に一体で立てるのが実務的です。