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技術動向

Q. 2026年8月のHot Chips 2026でSamsungがzHBMを発表――なぜ情シスの汎用DDR5調達に響く? A. HBMは1GBあたりDDR5の約3倍のウェハを消費し逼迫は長期化

RAMEXperts™️ 編集部
RAMEXperts朝刊。技術動向。HBM増産が汎用メモリ供給に及ぼす構造的影響。注目データはHBMはDDR5の約3倍のウェハを消費。

Hot Chips 2026で何が発表されたのか

2026年8月24〜25日に報じられた半導体技術会議Hot Chips 2026で、SamsungとSK hynixは次世代HBM(広帯域メモリ)の新技術を相次いで公開した。両社は同じ課題に対して「分岐」した戦略をとっており、これがAI向け部材の話にとどまらず、情シスの汎用メモリ調達にも間接的に響く。

Samsungは、HBMの土台となる「ベースダイ」を4nmのロジックプロセスに刷新し、演算機能を取り込む方向を打ち出した。最終形として示した「zHBM」は、インターポーザを排してDRAMと演算チップを直接積層する構想で、従来のHBM4Eスタック比で電力効率70%向上・DRAM帯域230%向上をうたう。放熱面では「Heat Path Block(HPB)」でピーク温度を35%超引き下げるとした。

一方のSK hynixは、実装(パッケージング)と放熱に軸足を置いた。封止材のMR-MUFでパッケージ高を775マイクロメートルに抑え、独自の「iHBM」で熱抵抗を約30%低減するとした。ハイブリッドボンディングはコアダイを24%厚くでき熱抵抗を35%下げられるものの、HBM4E世代には間に合わず、実装方式の転換はHBM5以降になるとの見通しを示した。16層48GBのHBM4は顧客の品質認証段階に入っている。

HBMとは――なぜ汎用DRAMの供給に影響するのか

結論から言えば、HBMの技術進化は汎用DDR5・サーバーDRAMの逼迫を長期化させる方向に働く。HBM(広帯域メモリ)とは、DRAMダイを垂直に積層しGPU近傍に配置する高帯域メモリで、AIアクセラレータの中核部材である。

ポイントは製造上の「交換比率」だ。Tom's Hardwareなどの集計によれば、HBMは同じ容量でも1GBあたり汎用DDR5の約3倍のウェハ面積を消費する(3対1の交換比率)。積層に伴う歩留まり損失や、TSV(貫通電極)・ウェハ薄化といった追加工程が要因で、ウェハ1枚あたりの売上はDDR5の3〜5倍にもなる。メーカーにとってHBMは同じ生産能力から桁違いの付加価値を生む製品であり、能力配分がHBMに傾く構造的な誘因になっている。

その結果、HBMは2026年にDRAMウェハ生産の約23%を消費すると見込まれ(Tom's Hardware推計、前年の約19%から上昇)、残りの能力を汎用DDR5やDDR4が奪い合う構図になる。今回のHot Chipsで示された積層数の増加・放熱の強化・ベースダイのロジック化は、いずれもHBMの製造難度と資源投入を一段と高める内容であり、汎用DRAMに回る余力を圧迫し続ける。

Samsung・SK hynixの「分岐」の違いとは

両社の戦略は下表のように整理できる。アプローチは異なるが、共通するのは、いずれもHBMへの技術・生産資源の集中を前提としている点だ。汎用DRAMより先にHBMへ能力が割り当てられる流れは、両社の路線が違っても変わらない。

項目SamsungSK hynix
主軸ベースダイのロジック化(4nm)先端実装・放熱
看板技術zHBM(インターポーザ排除)iHBM/MR-MUF/ハイブリッドボンディング
公表値電力効率70%・帯域230%向上(対HBM4E)熱抵抗約30%低減、パッケージ高775μm
次世代の焦点演算とメモリの一体化ハイブリッドボンディングはHBM5以降

情シスへの影響――汎用DDR5・サーバーDRAMの逼迫は続く

2026年8月27日時点で、情シスにとっての含意は明快だ。HBMの高収益性と技術的な高度化が続く限り、メーカーは汎用DRAMより先にHBMへ生産能力を割り当てる。HBMは1GBあたり汎用DDR5の約3倍のウェハ容量を消費するため、この「3対1」の交換比率が、AI向け増産が汎用DRAMの供給を構造的に細らせる主因である。

今回の発表は「価格が何%上がった」という話ではなく、その上流にある生産配分の方向性を示すものだ。積層数の増加やベースダイのロジック化は歩留まりや工程を一段と複雑にし、単位ウェハあたりのビット供給を圧迫する。つまり、AI需要が続く間は汎用DDR5・サーバーDRAMに振り向けられる能力が増えにくく、納期の長期化や価格の高止まりが前提になりやすい。自社のサーバー増設・更改を検討する際は、この供給配分の構図を織り込んで計画を立てる必要がある。

情シスが確認すべき3つのポイント

  • HBMの生産動向(DRAMウェハに占める比率、各社の増産・世代移行計画)を、汎用DDR5の供給余力を測る先行指標として四半期ごとに確認する
  • 2026〜2027年のサーバー増設・更改は、汎用DRAMの逼迫が長期化する前提で、必要時期から逆算して早めに構成(容量・世代)を確定し、発注枠の確保を検討する
  • 見積り取得時は、HBMへの能力集中の影響で汎用品の納期・価格が変動しうる点を織り込み、複数ベンダーからの調達余地を並行して評価する

よくある質問

Q: HBMは自社の業務サーバーやPCに使われていますか?

A: 一般的な業務サーバーやPCの主記憶はDDR5/DDR4であり、HBMは主にAI/GPUアクセラレータ向けです。ただしHBMがDRAMの生産能力を大きく消費するため、汎用DDR5の価格・納期に間接的な影響が及びます。

Q: zHBMやハイブリッドボンディングは汎用DDR5の価格を下げますか?

A: 直接は下げません。これらはHBMの性能・容量・放熱を高める技術で、むしろHBMへの資源集中を強め、汎用DRAMの供給余力を圧迫する方向に働きます。

Q: いつ汎用DRAMの逼迫は緩和しますか?

A: 2026年8月27日時点で明確な時期は公表されていません。新規生産能力の立ち上がりに依存し、複数の分析は緩和を2027年後半以降と見ています。条件により前後します。

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