2026年9月時点の事実:Samsungが第7世代「1d」DRAMの開発を今月完了へ
結論から言えば、微細化ノードの世代交代は進むが、その恩恵は当面HBM側に吸われる。DigiTimesなどの報道によると、Samsungは第7世代10nm級となる「1d」DRAMの開発を2026年9月に完了させる計画で、12月に量産準備工程へ移し、2027年上期に製造ラインを整備、初期量産は2027年後半を目標としている。1dの回路線幅は約10〜11nmで、現行の第6世代「1c」(約11〜12nm)より一段細い。
競合のSK hynixは1dの開発完了を2026年12月、量産準備を2027年6月に置いており、Samsungより約半年遅れとされる。ただし各社とも「開発目標」であり量産保証ではない。熱評価時の歩留まりや量産性の改善が残っており、歩留まり・性能・消費電力・顧客認定次第で日程は動きうる。
「1d DRAM」とは
1d DRAMとは、回路の線幅を狭めてウェハ1枚あたりのビット数(ビット密度)を高める、10nm台で7番目の微細化世代(プロセスノード)である。線幅が細いほど同じウェハから取れる容量が増え、理論上はビット単価と消費電力を下げられる。各社は1x→1y→1z→1a→1b→1c→1dと世代を刻んできた。1dは同社の最先端ノードで、次世代の高帯域メモリ「HBM5E」(登場は2029〜2030年ごろ)のベースダイ向けに使う計画とされる。
微細化で汎用DDR5は安く増えるのか——今回効かない3つの理由
結論は「2026〜2027年の汎用DRAMには効きにくい」。理由は配分先・時期・歩留まりの3点にある。
理由1:新ノードはHBMに優先配分される
最先端ノードで作れるウェハ枠は、まずHBMに割り当てられる。Samsungの1dはHBM5E向け、SK hynixの現行1cはHBM4E(2027年量産予定、サンプルは2026年7月に顧客提供)のコアダイに充てられる。微細化で増えるビットが汎用DDR5・RDIMM(サーバー向けの誤り訂正付きメモリモジュール)へ回るとは限らず、AI向けメモリが先取りする構図は世代交代でも変わらない。
理由2:量産は2027年後半で、2026〜2027年の調達には間に合わない
1dの初期量産は2027年後半が目標。2026年度〜2027年度前半のサーバー・PC更改やメモリ増設は、現行の1b/1c世代で作られた汎用DDR5で賄うことになる。新ノードの量産が本格化する前に、当面の逼迫は続く前提で計画する必要がある。
理由3:歩留まりが立ち上がるまで供給寄与は限定的
2026年9月時点で1dは開発段階にあり、熱評価の歩留まりや量産性の改善が課題として残る。歩留まり(良品率)が安定するまでは、微細化による実効的な供給増(ビットグロース)は限定的だ。
比較:SK hynixの1c比率はどう推移するか
微細化世代の移行スピードを示す指標として、SK hynixの1c(第6世代)生産比率の推移がある。TrendForce(2026年9月7日)によると、1cは2027年1四半期に主力の1bを追い抜く見通しだ。
| 時期 | SK hynix 1c比率 |
|---|---|
| 2026年1Q | 約10% |
| 2026年2Q | 約13% |
| 2026年3Q | 約24%(予測) |
| 2026年4Q | 約34%(予測) |
| 2027年1Q | 約35%(1b=約33%を逆転) |
同時期のSamsungの1c比率は約16%、Micronは約19%とされる。SK hynixが1cへ急速に軸足を移すのは、ビット生産性とコスト競争力を高め、HBM4Eのコアダイ供給に備えるためだ。裏を返せば、最先端ノードの主戦場はHBMであり、微細化の成果が汎用DRAMの値下がりに直結する段階ではない。
情シスへの影響:2026〜2027年の調達計画にどう効くか
微細化世代の更新はビット密度を高めて供給とコストを改善する伝統的な手段だが、2026〜2027年に立ち上がる最先端ノードはHBM向けに優先配分されるため、汎用DRAMの供給緩和には直結しない。情シスの実務では、「新ノードが出れば汎用DDR5が安く手に入る」という前提で更改を先送りすると、逼迫と価格上昇の期間を自ら延ばすことになりかねない。
2026年9月時点の合理的な前提は、(1)2026年度〜2027年度前半の調達は現行世代の汎用DDR5/RDIMMで確定する、(2)微細化による本格的な供給寄与は2027年後半以降を見込む、(3)その恩恵もHBM需要と歩留まり次第で汎用に回る保証はない——の3点だ。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 「新ノード待ち」で更改を延期しない:1dの量産は2027年後半目標。2026〜2027年前半の更改・増設は現行世代の在庫と見積りで台数・構成を早期に確定する。
- ベンダーに世代・ノードとロードマップを確認する:見積りの製品が1b/1c世代のどれか、EOL(生産終了)予定と後継品、納期を書面で押さえる。同一DIMMの奪い合いはHBM需要が続く限り解消しない前提で臨む。
- HBM需要と歩留まりを供給前提の変数に置く:HBM4E/HBM5Eの量産進捗と最先端ノードの歩留まり改善が、汎用DRAMに回る余剰を左右する。四半期ごとにメーカーの生産配分を点検する。
よくある質問
Q: 微細化(1c→1d)が進めば汎用DDR5メモリは値下がりしますか?
A: 2026〜2027年は期待しにくいです。1dの初期量産は2027年後半が目標で、増えるビットはHBM5E/HBM4Eなどに優先配分されます。世代交代=汎用の値下がり、とは直結しません。
Q: SamsungとSK hynixで1d DRAMの進捗に差はありますか?
A: Samsungが開発完了を2026年9月、SK hynixを2026年12月に置いており、Samsungが約半年先行するとの報道です。ただし両社とも開発目標であり、歩留まり次第で日程は変わりえます。
Q: 情シスは今のサーバー更改でどの世代のDRAMを前提にすべきですか?
A: 2026〜2027年前半は現行の1b/1c世代で作られた汎用DDR5/RDIMMを前提に、台数と構成を早期に確定するのが妥当です。新ノードの量産化を待つ設計はおすすめしません。