2026年9月、Samsung・SK hynixの完成品在庫が「10日割れ」
結論から言えば、DRAMの供給余力は2026年9月時点で過去最低水準まで細っている。KB証券のアナリスト、キム・ドンウォン氏は9月7日付のレポートで、SamsungとSK hynixが第3四半期に保有する完成品メモリ在庫が「10日分を下回った」と推計した。両社はMicronと合わせて世界のDRAM供給の9割超を握る主力サプライヤーであり、その手元在庫の薄さは、そのまま市場全体のバッファの薄さを意味する。
DRAM(Dynamic Random Access Memory)とは、サーバーやPCの主記憶に使われる揮発性メモリで、DDR5やDDR4といった規格で流通する。そのメーカー在庫が10日を切ったという推計は、注文してから玉が回ってくるまでの「待ち行列」がこれまで以上に長くなり得ることを示す。情シスの実務に引き付ければ、これは価格の話というより「発注しても割り当てが後回しになりやすい」供給の話である。
在庫日数とは——通常30〜45日が担う「緩衝材」の役割
在庫日数とは、メーカーが何日分の出荷に相当する完成品を手元に持っているかを示す指標で、半導体では30〜45日が健全な水準とされる。この30〜45日が、製造トラブル・輸送遅延・需要の急増といった揺れを吸収するクッションになる。
10日を切るということは、Samsung・SK hynixが「作ったそばから出荷している」状態に近く、緩衝材がほぼ失われていることを意味する。2026年9月14日時点で、供給網には想定外の需要変動や生産・物流の乱れを吸収する余地がほとんど残っていない。買い手側から見れば、これまで暗黙に頼ってきた「メーカー在庫からの穴埋め」が効きにくくなったということだ。
数字で見る供給余力(2026年9月時点)
| 指標 | 通常時 | 2026年Q3(KB証券推計) |
|---|---|---|
| メーカー完成品在庫 | 30〜45日 | 10日未満 |
| DRAM+NANDの需給ギャップ(2027年見通し) | — | 需要が供給を10ポイント超上回る |
| 新規生産能力の立ち上がり | — | 稼働まで2〜3年 |
なぜ在庫が積み上がらないのか——HBMシフトという構造要因
在庫が薄い最大の理由は、限られたウェハ生産能力がAI向けの高付加価値メモリに吸い上げられているためだ。HBM(High Bandwidth Memory、広帯域メモリ)とは、DRAMを積層してAIアクセラレータ向けに広い帯域を確保した高単価メモリで、最新世代のHBM4は同容量の汎用DRAMのおよそ3倍のウェハ生産能力を消費するとされる。メーカーが高収益なHBMやサーバー向けDRAMにラインを振り向けるほど、汎用のDDR5・DDR4に回る量は削られる。
KB証券は、2027年のDRAM・NANDのビット需要の伸びが供給の伸びを10ポイント超上回り、売れる在庫が枯渇する可能性があると指摘している。しかも新工場の生産能力が立ち上がるには2〜3年かかるため、これは一時的な品薄ではなく構造的な逼迫と位置づけられる。増設・更改の計画は「供給が緩む」前提ではなく「逼迫が続く」前提で組むのが妥当だ。
「10日割れ」の推計をどう読むか——留意すべき点
一方で、この数字は各社が共同で公表した経営指標ではなく、出荷パターンや生産前提をもとにしたアナリストの試算である点は出典も明記している。在庫はある製品カテゴリでは薄くても、別のカテゴリでは相対的に余裕があり得る。したがって「あらゆるメモリが即座に入手不能になる」という話ではなく、正確には「サプライヤーの供給柔軟性が著しく乏しい、逼迫した市場」と読むのが妥当だ。
情シスにとっての示唆は、投機的な買い占めではなく、自社が使う具体的な製品カテゴリ(DDR5 RDIMM/DDR4 ECC/LPDDR等)ごとに納期と引き当て状況を確認することにある。数字の精度を巡る議論があっても、「供給側にバッファがほぼない」という方向性は複数の報道で一致しており、調達計画の前提としては十分に機能する。
情シスへの影響——在庫・調達戦略はどう変わるか
供給側のバッファが10日を切っている以上、需要側(買い手)がバッファを持つ発想への転換が要る。サーバーメモリでは、DIMMを単体で買うより完成機の構成として確保する動きが強まっており、増設用の予備枠は後回しにされやすい。特に、更改や増設で使うDDR5 RDIMM(サーバー向けのバッファ付きメモリモジュール)や、旧世代機の保守で必要なDDR4 ECCは、発注確定が遅れるほど引き当て順位が下がる。
調達先の一極集中も見直しどころだ。供給網に緩衝材がない局面では、天候・労働争議・地政学といった一つの乱れが在庫をゼロに近づけ得る。単一ベンダー・単一拠点への依存度を下げ、複数四半期先までの需要を見積もって発注枠を先に押さえておく——確定発注に対してのみ生産する「引き当て」型の運用が常態化しているため、見える化した需要を早期に枠として確定させた企業ほど、納期と価格の両面で有利になりやすい。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 自社の該当カテゴリの引き当て状況:DDR5 RDIMM/DDR4 ECC/LPDDRなど、実際に使う製品ごとに現在の納期・割当率・見積もり有効期限をベンダーに確認する。
- 需要の複数四半期先までの見える化:増設・更改・保守の必要数を2027年分まで棚卸しし、確定できる分は早期に発注枠として先押さえする。
- 調達先とロットの分散:単一ベンダー・単一世代への依存度を点検し、DDR4保守分の複数年契約や代替構成(容量・枚数の組み替え)を用意しておく。
よくある質問
Q: 在庫が10日を切ったなら、まとめて買い置きすべきですか?
A: 一律の買い占めは推奨されません。今回の数字はアナリスト試算で、逼迫度は製品カテゴリごとに差があります。自社が実際に使うDDR5 RDIMMやDDR4 ECCなどについて、必要数を見積もったうえで確定分を早めに発注枠として押さえるのが現実的です。
Q: 供給が緩むのはいつ頃の見込みですか?
A: KB証券は2027年もビット需要が供給を10ポイント超上回ると見ています。新規生産能力の立ち上がりに2〜3年かかることから、2026年9月時点では短期での大幅緩和は見込みにくく、逼迫継続を前提にした計画が無難です。
Q: HBMの話は自社の汎用メモリ調達と関係ありますか?
A: 関係します。HBM4は同容量の汎用DRAMの約3倍のウェハを消費し、メーカーが能力をHBMに振り向けるほどDDR5・DDR4に回る量が減ります。AI向け需要の強さが、そのまま一般企業のサーバー・PC増設用メモリの入手性に波及します。