DDR4契約価格が3カ月で24%上昇、DDR5を逆転した背景とは
結論から言えば、旧世代メモリであるDDR4の値上がりが新世代のDDR5を上回る「価格逆転」が進んでいる。2026年10月12日に報じられたBarclaysの集計によると、サーバー向けDRAMの契約価格はDDR4が前月比+4%・直近3カ月で累計+24%上昇し、同期間のDDR5(前月比+3%・3カ月で+20%)を上回った。ここで言う契約価格とは、メーカーと大口需要家が四半期などの単位で結ぶ相対取引の価格を指し、日々変動するスポット価格とは別物である。スポット市場でもDDR5が前月比+8%と上昇しており、契約・スポットのいずれでも値上がり基調が続いている。
注目すべきは、より古いDDR4の上昇ピッチが新しいDDR5を上回っている点だ。一部の流通チャネルでは、DDR4がDDR5より高値で取引される逆転現象も報告されている。「新しい規格のほうが高い」という従来の常識が崩れつつあるということだ。
なぜ旧世代のDDR4がDDR5より上がるのか
理由は供給側の構造にある。DDR4とは、2012年にJEDECで標準化され2014年に市場投入された旧世代のDRAM規格で、現役のサーバーやデスクトップPCに加え、産業用機器・組み込み機器・ネットワーク装置で今も広く使われている。Samsung・SK hynix・Micronの大手3社は、生産能力をDDR5やAI向けのHBM(広帯域メモリ)へ振り向けるため、2025年からDDR4の生産を縮小してきた。その結果、既存機器の増設・保守に不可欠なDDR4の玉が細り、クラウド事業者のサーバー向け需要やEOL告知を受けた駆け込み発注と重なって、値上がりが加速している。
情シスへの影響:DDR4→DDR5移行判断にどう効くか
最も実務に効くのは、「旧機をDDR4増設で延命する」か「DDR5世代のサーバーへ移行する」かの損益分岐が前倒しになった点だ。EOL(End of Life、製品の製造・供給が終了すること)を迎える前提で延命コストを見積もっていた企業は、DDR4のメモリ単価そのものが上がったことで、増設による延命の割安感が薄れている。2026年10月時点で、旧世代のDDR4は契約価格の上昇率でDDR5を上回っており、新しい規格に移れば必ず安くなるとは限らない状況にある。
一方で、値上がりを受けてメーカーがEOLを後ろ倒ししている点も見逃せない。Samsungは当初2025年後半に1znmノードのDDR4ラインを停止する計画だったが、生産を2026年12月まで延長した。SK hynixも無錫(Wuxi)工場の能力を増強してDDR4出荷を続けているとされる(Tom's Hardware報道)。ただしEOLの延期は「まだ買える」ことを意味するだけで、価格が下がる保証ではない。
コストを抑える動きとして、搭載メモリ容量を一段落とす「デスペック(仕様の引き下げ)」も広がっている。報道では、テスラが新型AIチップの搭載メモリを96GB構成へ調整し、最下位構成を避けた例が挙げられた。容量を削る調整は、逼迫下での現実的な選択肢の一つになりつつある。
| 区分 | DDR4 | DDR5 |
|---|---|---|
| 契約価格・前月比 | +4% | +3% |
| 契約価格・直近3カ月 | +24% | +20% |
| スポット価格・前月比 | (報道なし) | +8% |
(出典:Barclays集計/2026年10月、Wccftech報道)
供給逼迫はいつまで続くのか
短期での緩和は見込みにくい、というのが現時点の大方の見方だ。Barclaysは、Micronの供給逼迫が2029年まで続くとの見通しを示している。CitiはDRAMの需給ギャップが2027年Q4に供給不足率13.9%でピークを打ち、2028年まで不足が続くと予測した。さらにIntelのCEOは「あと2〜3年はこの状況が続く」と述べたと報じられている(TechRadar、2026年10月12日)。2026年10月15日時点で、複数の金融機関と半導体メーカー幹部が「数年単位の逼迫」で見方をそろえつつある。
情シスが確認すべき3つのポイント
- DDR4搭載機の棚卸しとEOL状況の確認:自社のサーバー・産業用機器・ネットワーク機器でDDR4を使う台数と規格(UDIMM/RDIMM等)を洗い出し、各メーカーのEOL延期スケジュールと合わせて保守用在庫の過不足を点検する。
- 延命か移行かの損益分岐の再計算:DDR4増設の単価が上がった前提で、延命コストとDDR5世代への移行コストを再見積もりする。移行しても必ず安くなるとは限らない点を織り込む。
- 契約価格ベースでの複数年枠の確保:スポットだけでなく契約価格が3カ月で2割超上がっている以上、FY2027以降の調達は数量と価格帯を決める複数年の枠取りを前提に予算化する。
よくある質問
Q: DDR4とDDR5、今から調達するならどちらが割安ですか?
A: 2026年10月時点では一概に言えない。DDR4は3カ月で+24%とDDR5(+20%)を上回る上昇率で、チャネルによってはDDR4がDDR5より高いケースも報告されている。新規導入ならDDR5世代を基準に、既存機の延命はDDR4単価の上昇を織り込んで比較するのが現実的だ。
Q: メーカーがEOLを延期したなら、DDR4の調達を急がなくてよいですか?
A: EOL延期は入手可能な期間が延びるという意味で、価格が下がることを意味しない。むしろ値上がりが続いているため、必要数量の枠は早めに押さえ、延命計画は価格上昇を前提に見直したほうがよい。
Q: この価格逆転と逼迫はいつまで続きますか?
A: BarclaysはMicronの逼迫が2029年まで、CitiはDRAM不足が2027年Q4ピーク・2028年まで続くと予測し、IntelのCEOも「あと2〜3年」と発言したと報じられている。2026年10月15日時点では、数年単位の継続を前提に調達計画を立てるのが妥当だ。