2026年8月のFMS 2026でSamsungが発表した「次世代3Dメモリ」とは
Samsungは2026年8月4〜6日に米カリフォルニア州サンタクララで開催されたFMS 2026(Future of Memory and Storage)で、AIインフラ向けの次世代メモリ技術を3つ公開した。中核の「zHBM」は次世代のHBM5と比べて約8倍の性能をうたう概念モデルで、あわせて業界初となる400層超のNAND「V10 BV-NAND」も発表された。いずれも2026年8月5日付で各メディアが報じている。
ここでいうHBM(High Bandwidth Memory)とは、DRAMを縦に積層してGPUやAIアクセラレーターの近くに置く広帯域メモリである。従来はプロセッサの「隣」に配置してきたが、zHBMはアクセラレーターの「真上」に積み上げ、データが移動する距離を縮める点が新しい。
zHBM・zNAND-O・V10 BV-NANDの主な仕様
| 技術 | 段階 | 主な数値 | 主対象 |
|---|---|---|---|
| zHBM | 概念モデル | HBM5比 約8倍の性能/10倍超の密度/電力効率3倍/熱抵抗50%超の低減 | AIアクセラレーター |
| zNAND-O | 概念モデル | 4層・8層構成、複数チップをボンディングで接合 | エッジ/オンデバイスAI |
| V10 BV-NAND | 業界初発表(出荷時期未公表) | 400層超、V9比 約58%の高密度化 | AIデータセンター向けストレージ |
3技術に共通するのは「ウェハーボンディング(ウェハー同士を接合して積層する製造技術)」を前提にしている点である。zHBMとzNAND-Oは2026年8月時点で購入可能な製品ではなく、方向性を示す概念モデル(コンセプト)にとどまる。V10 BV-NANDは最も具体的な発表だが、出荷時期は公表されていない。
この発表が情シスに与える影響とは
結論から言えば、2026〜2027年のサーバー・PC調達計画を今回の発表だけで変える必要はない。zHBMもzNAND-Oも概念段階で、想定される主戦場はAIアクセラレーターやAIデータセンターであり、企業の一般業務サーバーやクライアントPCに近い将来搭載される製品ではないからだ。
zHBMやzNAND-Oは2026年8月時点で購入可能な製品ではなく、AIアクセラレーター直上にメモリを積む概念モデルであり、企業サーバーの当面の調達対象は依然としてDDR5 RDIMM/MRDIMMである。ここでRDIMM(Registered DIMM)とは、レジスタを介して多数のメモリを安定動作させるサーバー向けモジュールを指し、MRDIMMはその帯域を引き上げた新世代規格である。
概念発表と「実際に買えるメモリ」の違いは何か
ロードマップの発表と、実際に見積もり・発注できる製品は別物である。過去のメモリ技術も、学会・展示会での概念公開から量産・一般サーバーへの搭載までに数年を要してきた。情シスが「次世代が出るなら待とう」と判断すると、更改が遅れ、逼迫した現行世代を割高なタイミングで買う結果になりやすい。
2026年8月9日時点で、企業が調達すべきメモリの実体は次のとおり整理できる。
- いま買える主力:DDR5 RDIMM、および帯域重視構成のMRDIMM(対応CPU世代の確認が前提)
- 数年先の方向性:ウェハーボンディングによるメモリとロジックの近接・積層(zHBM/zNAND-O)
- すぐ効いてくる話ではない:400層超NANDのような大容量化は歓迎材料だが、価格・供給に反映されるのは先になる
なぜ「発表待ち」の判断が裏目に出やすいのか
今回の3技術がいずれも先端のウェハーボンディングを前提にしている点は、情シスにとって見逃せない含意がある。メーカーの先端製造・研究開発リソースがAI向けメモリに一段と集中していることを裏づけるからだ。先端キャパシティがAI向けに振り向けられるほど、一般的なDDR5/DDR4の供給余力は相対的に細りやすい。
つまり「次世代を待つ」姿勢は、待っている間も現行世代の逼迫が続くリスクを抱える。2026年8月時点の実務判断としては、発表内容を長期の方向性として記録しつつ、当面必要な容量は現行世代で確保するのが妥当である。互換性の検証や見積もり、納期の確認も、あくまで現行世代の増設・更改を軸に進めるべきだ。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 「概念か製品か」を切り分ける:発表されたメモリが見積もり可能な製品か、ロードマップ上の概念モデルかを確認し、後者を調達前提に組み込まない。
- 当面の調達は現行世代で確定させる:2026〜2027年に必要なサーバー・増設用メモリはDDR5 RDIMM/MRDIMMで数量・時期を確保し、次世代発表を理由に更改を遅らせない。
- 次世代は将来の設計インプットとして記録:zHBMやウェハーボンディングの方向性は、将来のAI基盤・高帯域用途の設計検討材料として社内ロードマップに残す。
よくある質問
Q: zHBMや400層V-NANDは、自社の業務サーバーにいつ載りますか?
A: 2026年8月時点でzHBMとzNAND-Oは概念モデルで、出荷時期は公表されていません。主対象はAIアクセラレーターやAIデータセンターであり、一般業務サーバーに近い将来搭載される見込みは示されていません。当面の調達はDDR5 RDIMM/MRDIMMを前提に進めるのが妥当です。
Q: 次世代メモリの発表を理由に、いまのサーバー更改を延期すべきですか?
A: 推奨しません。発表は概念段階で、購入可能な製品ではありません。延期すると逼迫が続く現行世代を後から割高に調達するリスクが高まります。必要容量は現行世代で確保するのが安全です。
Q: 400層超のNANDが出ると、ストレージやメモリは安くなりますか?
A: 高積層化は中長期の大容量化・コスト効率化に寄与しますが、V10 BV-NANDは出荷時期が未公表で、短期の価格に直結するとは限りません。2026年の調達判断は現行の供給・価格状況に基づくべきです。