2026年Q2に起きたこと:CXMTが世界シェア10%、上位3社が初の90%割れ
2026年9月5日時点の最新データとして、米調査会社Counterpoint Researchは2026年8月3日、中国のCXMT(長鑫存儲/ChangXin Memory Technologies)が2026年Q2にDRAM売上シェア10%へ到達したと報告した(韓国のSeoul Economic Dailyなどが9月3日に報道)。CXMTのシェアは2025年Q2の4%、2026年Q1の8%から連続で拡大しており、Counterpoint・UBSが当初10%到達を2028年と見込んでいたことを踏まえると、約2年早い到達となる。
同時に、Samsungが38%(前年同期比+5ポイント)、SK hynixが25%(同−14ポイント)、Micronが24%となり、上位3社の売上シェア合計は約87%まで低下した。長年続いたSamsung・SK hynix・Micronの3社寡占が、初めて90%を割ったことになる。2位SK hynixと3位Micronの差は約1ポイントまで縮小している。
CXMTとは
CXMTとは、合肥と北京に300mmウェハ工場を持つ中国最大のDRAMメーカーである。売上の約99%はDDR5・DDR4・LPDDRといった汎用(コモディティ)DRAMで(HBMは1%以下)、先端のHBM(High Bandwidth Memory=AIアクセラレータ向け広帯域メモリ)ではなく、情シスが一般サーバー・PC向けに調達する量産メモリを主戦場としている点が、今回のシェア拡大の起点になっている。
なぜ上位3社の寡占が崩れたのか:HBMシフトが生んだ「空白」
結論から言えば、寡占が崩れた最大の要因はAI需要である。Samsung・SK hynix・Micronはより高採算なHBMへ生産能力を振り向け、1a世代の汎用DRAMやDDR4といったレガシー・量産品の供給を絞った。この空白をCXMTが積極的に埋めた。
DDR4とは、2014年から普及した旧世代の主力メモリ規格で、既存サーバー・PCの多くが依然として搭載している。DDR5とは、DDR4の後継で帯域と容量を高めた現行の主力規格である。上位3社が縮小したのはまさにこのDDR4と汎用DDR5であり、情シスが日常的に買う領域と重なる。SK hynixのシェアが前年から14ポイント落ちた背景について、Counterpointは、同社が最もHBM比率が高くHBM価格の下落の影響を強く受けたことと、長期供給契約(LTA)の比率が高いため汎用DRAMの価格上昇を売上に取り込みにくかったことを挙げている(なお同社の四半期売上自体は前年同期比で大きく伸びており、シェア低下は主に他社の急伸によるものである)。
市場シェアの動き(2026年Q2、Counterpoint調べ)
| メーカー | 2026年Q2 売上シェア | 前年同期比の動き |
|---|---|---|
| Samsung | 38% | +5ポイント |
| SK hynix | 25% | −14ポイント |
| Micron | 24% | SK hynixと約1ポイント差 |
| CXMT | 10% | 4%→8%→10%(1年で約2.5倍) |
情シスへの影響:第4の供給源は「調達先分散」の選択肢になるか
2026年9月5日時点の評価として、CXMTの台頭は中長期的に「調達先分散」の現実的な選択肢を増やす一方、短期の逼迫を直ちに解消するものではない。CXMTが伸びているのはDDR4・汎用DDR5・LPDDRという情シスの調達領域そのものであり、供給元が実質3社から4社へ増える意味は小さくない。
ただし採用には固有の確認事項がある。CXMTは2025年1月に米国防総省の「中国軍事企業(1260H)」リストに指定され、2026年6月の更新(65社追加)でも同リストに残された。商務省エンティティリストへの追加も省庁横断の委員会で承認済みとされるが、公表は保留されている。1260Hとは、米政府・防衛関連の契約を制限する指定で、2026年6月30日以降、国防総省はCXMT関連と新規・更新・延長の契約を結べない。ただしこれは民間・商用の購入自体を禁じるものではない。実際、主要マザーボードメーカー(ASUS・MSI・Gigabyteなど)はCXMTのDDR5を検証済みで、HP・Acer・ASUSは米国外で販売される一部の廉価ノートPCモデルでCXMT製DRAMの限定採用を始めたと報じられている。
つまり日本の一般的な情シスにとっては、法的な購入禁止ではなく、(1) 米政府・防衛系の顧客や取引を持つ場合のコンプライアンス・レピュテーションリスク、(2) 品質認定・保証・長期サポート・QVL(Qualified Vendor List=メーカー動作検証済みリスト)掲載の有無、という実務判断が焦点になる。
今後の見通し
CXMTの生産能力は2025年時点で世界の約11%、2028年末までに約17%、2030年には30%を狙うとされ、北京に第6の大規模工場を計画している。一方で、先端製造装置へのアクセスや輸出規制が拡大のボトルネックになると指摘されており、能力が実際の供給として市場を緩めるのは2027〜2028年以降になる見込みだ。したがって、2026〜2027年の調達計画は引き続き逼迫前提で組むのが妥当である。CXMTの存在は「今すぐ安く買える先」ではなく、「複数購買の設計に織り込む中期の選択肢」として位置づけるのが実態に合う。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 自社のサーバー・PC・メモリモジュールに搭載されるDRAMの製造元を、OEM/ベンダーに確認する(CXMT製が含まれ得るか、QVL掲載や保証・サポート条件はどうか)。
- 米政府・防衛関連の顧客や取引の有無を棚卸しし、CXMT採用が1260H等のコンプライアンス上の問題にならないか法務・調達部門と確認する。
- 2027〜2028年を見据えて汎用DDR4/DDR5の複数購買(第4供給源を含む)を設計しつつ、2026〜2027年は逼迫前提で発注枠を先に確保する。
よくある質問(FAQ)
Q: CXMTのメモリは日本企業が普通に買っても問題ないのか?
A: 1260H指定は米政府・防衛契約向けの制限であり、民間・商用の購入自体を禁じるものではない。ただし米政府・防衛系の取引がある場合はコンプライアンス確認が必要になる。品質面は主要マザーボードメーカーによる検証が進んでいるが、QVL掲載・保証・長期サポートの有無は製品・ベンダー単位で個別に確認すべきである。
Q: CXMTが伸びれば汎用DRAM価格は下がるのか?
A: 中長期では供給源の増加が価格圧力の緩和要因になり得る。ただし2026〜2027年は上位3社のHBMシフトにより逼迫が続く見込みで、CXMTの生産能力が市場を緩めるのは2027〜2028年以降とされる。短期の値下がりを前提にした調達計画は避けるべきである。
Q: DDR4とDDR5、どちらでCXMTの影響が大きいのか?
A: CXMTはDDR4・汎用DDR5・LPDDRといったレガシー/量産領域が主戦場である。上位3社が縮小したこの領域をCXMTが埋めているため、レガシー機のDDR4増設や一般サーバー・PC向けDDR5の調達に影響が及びやすい。