TrendForceの集計をもとにDigiTimesが2026年10月6日に報じたところによると、2025年の第三者(サードパーティ)DRAMモジュール市場は売上高212億ドル(約21.2 billion)に達し、前年比59%増と2024年の7%増から大きく加速した。首位のKingston Technologyは62%のシェアで23年連続のトップを維持したが、同社自身の増収率は48%と市場平均を11ポイント下回った。この「首位が市場平均に届かない」という逆転現象こそ、法人のメモリ調達にとって見逃せないシグナルである。
DRAMモジュール市場とは——2025年に212億ドル規模へ拡大
結論から言えば、2025年のモジュール市場の急拡大は数量増ではなく価格高騰が主因であり、供給が潤沢になったわけではない。DRAMモジュールとは、Samsung・SK hynix・Micronが製造するDRAMチップを基板に実装し、サーバーやPCのメモリスロットに挿して使う部品(DIMMやサーバー用のRDIMM)を指す。モジュールメーカーはチップを3大メーカーから調達して完成品に仕上げる「下流」の層にあたる。
TrendForceによれば、この第三者モジュール市場の2025年売上高は212億ドルで、前年比59%増。前年(2024年)の増収率がわずか7%だったことを踏まえると、1年で成長ペースが8倍以上に跳ね上がった計算だ。背景にあるのは2025年後半からのDRAM価格急騰で、モジュールの単価が上がったことが売上高を押し上げた。つまり市場の拡大は「よく売れた」からではなく「高く売れた」からであり、調達側にとっては追い風ではない。
なぜ首位Kingstonの48%成長は市場平均を下回ったのか——AIサーバーの玉突き
要点は、クラウド事業者のAI投資がモジュール向けのDRAM供給を押しのけた点にある。CSP(クラウドサービスプロバイダー)とは、サーバー資源をネット越しに貸し出す大手クラウド事業者を指す。TrendForceの分析では、北米と中国のCSPがエージェント型AI(自律的にタスクを実行するAIワークロード)向けにサーバーDRAMを大量発注し、メーカーがウェハをそちらへ再配分した結果、PCや汎用向けのモジュール用チップに回る玉が細った。
首位Kingstonは市場全体の約3分の2を占める規模ゆえ、その増収率は市場全体の動きを大きく左右するが、数量を伸ばしきれず増収率は48%にとどまり、市場平均の59%には届かなかった。対照的に、供給逼迫の前に在庫を積み増していた中堅メーカーが突出した伸びを示した。2026年10月8日時点で確認できる主要メーカーの2025年増収率は次の通りである。
| メーカー | 2025年 増収率 |
|---|---|
| Ramaxel | +153% |
| Innodisk | +132% |
| Apacer | +96% |
| Patriot Memory | +89% |
| ADATA | +82% |
| 市場平均 | +59% |
| Kingston(首位) | +48% |
この並びが示すのは、逼迫市場では「先に在庫を押さえた者」が供給と売上を取れたという事実だ。価格が上がる前に玉を確保していたか否かが、そのまま成績に直結した。
モジュール市場の寡占は法人のDIMM調達に何を意味するか
最大の論点は、供給元の集中度である。2025年は上位5社で市場の77%、上位9社で81%を占めた。Kingston1社で約3分の2という、極端に寡占化した構造だ。情シスが「調達先を複数ブランドに分ければリスクを分散できる」と考えがちだが、その効果は限定的である。
モジュールメーカーを分散しても、その原材料であるDRAMチップは実質的にSamsung・SK hynix・Micronの3社に依存するため、調達リスクの根は分散しきれない。ブランドA・B・Cを並べても、上流の玉が足りなければ全社が同時に影響を受ける。DigiTimesが2026年10月6日に指摘したのは、企業・データセンター・産業用途の顧客が「安定供給・製品信頼性・長期の技術サポート」を強く求めるようになり、B2Bがモジュール各社の成長エンジンになっているという変化である。裏を返せば、玉不足の局面では長期供給を保証できる供給元の価値が一段と高まる。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 調達中SKUの供給継続性を確認: いま調達しているブランドDIMM/RDIMMが、B2B・データセンター向けで長期供給と検証(バリデーション)保証のある型番か。EOL(製品の販売・サポート終了)や後継品の有無も併せて確認する。
- 「ブランド分散」より「早期の枠確保」: 上位5社で77%という寡占と上流チップの共通性を踏まえ、供給元を増やすより、増設・更改は初期構成で容量を確定し、複数年の枠や在庫の前倒しで玉を押さえる。2025年に伸びたのは事前に在庫を積んだメーカーだった。
- 見積もりは単価上昇前提で再試算: 市場拡大の主因は価格高騰であり数量増ではない。サーバー用DRAMとPC用モジュールを分けて、単価上昇を織り込んだ予算に組み替える。
よくある質問
Q: DRAMモジュールメーカーを複数に分散すれば調達リスクは下がりますか?
A: 効果は限定的です。モジュールメーカーは上位5社で市場の77%を占め、いずれもSamsung・SK hynix・Micronの3社が作るDRAMチップを調達して製造しています。ブランドを分けても上流のチップ不足という根本要因は変わらないため、分散より早期の枠確保・在庫前倒しの方が実効性があります。
Q: なぜモジュール市場は2025年に前年比59%も伸びたのですか?
A: 主因は数量増ではなく価格高騰です。AIサーバー向けに北米・中国のクラウド事業者(CSP)がサーバーDRAMを大量発注し、メーカーがウェハをそちらへ再配分した結果、DRAM価格が急騰。モジュールの単価が上がって売上高を押し上げました。首位Kingstonでも増収率は48%にとどまり、供給の逼迫を映しています。
Q: 法人がサーバー増設用DIMMを買うなら、今どう動くべきですか?
A: 2026年10月8日時点で供給の逼迫は続いています。2025年に増収率が高かったのは事前に在庫を積んだメーカーで、早期確保が奏功しました。増設・更改は後付けを前提にせず初期構成で容量を確定し、長期供給・検証保証のあるB2B向けSKUを複数年の枠で押さえるのが現実的です。