Gartnerが言う「メムフレーション」とは
2026年8月25日時点で、メモリ価格の高騰は一時的な需給の乱れではなく、構造的な価格レジームとして語られ始めている。英メディアThe Registerが2026年8月24日に報じたGartnerの最新予測によれば、2026年のDRAM売上は前年比+246.6%、NANDフラッシュ売上は+371.9%に達し、メモリ市場全体の売上は2026年に約8,370億ドル、2027年には1兆ドルを超える見通しだ。Gartnerはこの現象を「メムフレーション(memflation)」と呼ぶ。
メムフレーション(memflation)とは、AIインフラ向けの需要でDRAM・NANDの価格が高騰し、メモリ市場全体の売上を押し上げる現象を指すGartnerの造語である。売上が前年の3倍超に膨らむのは出荷数量が3倍になったからではなく、単価が跳ね上がっているためだ。つまり+246.6%という数字の大半は「値上がり」であり、情シスの調達単価に直結する。
数字で見る2026〜2027年のメモリ市場
結論から言えば、メモリは半導体業界の売上構成を塗り替える主役になった。Gartnerの8月更新値では、世界半導体売上は2025年の8,090億ドルから2026年に1.6兆ドル(前年比+92%)、2027年には1.9兆ドルへ拡大する。うちメモリ単独で2027年に1兆ドルを超える。
| 指標 | 2025年(実績) | 2026年(予測) | 2027年(予測) |
|---|---|---|---|
| 世界半導体売上 | 8,090億ドル | 1.6兆ドル(+92%) | 1.9兆ドル |
| メモリ売上 | 約2,200億ドル | 約8,370億ドル | 1兆ドル超 |
| DRAM売上 前年比 | — | +246.6% | — |
| NAND売上 前年比 | — | +371.9% | — |
比較の軸として、Gartnerは2026年4月時点では同年の半導体売上を1.3兆ドルと予測していた。わずか4か月で1.6兆ドルへ上方修正されたこと自体が、価格上昇が想定を上回るペースで進んでいることを示す。同社ディレクターアナリストのBen Lee氏は「半導体業界は根本的に新しい成長局面に入りつつある」と述べている。
「メムフレーション」が情シスの調達・予算に与える影響とは
最大の論点は、今の高値が「循環的な山(いずれ下がる)」なのか「構造的な床(当面下がらない)」なのかだ。Gartnerの見立ては後者に近い。ディレクターアナリストのShrish Pant氏は「AIインフラがメモリ市場のダイナミクスを根本から変えた」とし、AIサーバー1台あたりのメモリ搭載量の増加とHBM(High Bandwidth Memory:AIアクセラレータ向けの広帯域メモリ)需要が2027年以降もメモリ売上を支えると指摘する。
需要面でも同じ絵が描ける。The Registerによれば、AIデータセンター向け需要は半導体売上の36.5%(2026年)から2030年には53%超へ拡大する一方、メモリ高で最終製品が値上がりするスマートフォン市場は約15%縮小する見込みだ。ここで重要なのは、PCやスマホの需要が落ちても価格が下がりにくい点である。メーカーは空いた汎用ラインをAI向けHBM・サーバーDRAMへ振り向けるため、需要減が価格の押し下げにつながりにくい。
調達実務への含意は明確だ。TrendForceによれば、一部の米系クラウド事業者(CSP)はすでに複数年の長期契約(LTA:Long-Term Agreement、数年単位で供給量・数量を取り決める契約)を結び、供給側の値上げを抑えている。こうしたLTAを持たない企業ほど、次の値上げ局面で価格転嫁を受けやすい。またThe Registerによれば、Samsungはメモリの供給逼迫が2028年まで続くと警告している。情シスにとって、メモリはもはや「安くなるまで待つ」対象ではなく、複数年の予算前提に織り込むべき固定的なコスト要因になった。
具体的には、FY2027(2027年度)の予算策定で、サーバー・PCのメモリ単価を「高騰前」ではなく「2026年下期の実勢」を起点に置き直す必要がある。参考として、TrendForceは2026年第3四半期の汎用DRAM契約価格を前四半期比+13〜18%と見込んでおり、上げ幅は鈍化しつつも上昇自体は続く。稟議では「値下がり待ち」を前提にした据え置き予算は、発注時に見積り差で否決されるリスクが高い。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 予算ベースラインの引き上げ:FY2027のメモリ単価前提を「高騰前」から「2026年下期実勢」へ更新し、少なくとも2028年までは高値継続を前提に複数年で予算化する。
- 契約形態の見直し:スポット・短期発注に依存している場合、数量根拠を固めて複数年・数量コミット型の契約枠を検討する。長期契約を持たない企業ほど次の値上げを被りやすい。
- 構成の最適化と前倒し:更改・増設は「メモリ搭載量」で費用が決まるため、必要容量の精査(過剰なdensity回避)と、必要時期からの逆算による早期の発注枠確保を並行する。
よくある質問(FAQ)
Q: 「メムフレーション」でDRAM価格はいつ下がりますか?
A: 2026年8月25日時点のGartner予測では、メモリ売上は2027年に1兆ドルを超えて拡大が続く見通しだ。またThe Registerによれば、Samsungはメモリの供給逼迫が2028年まで続くと警告している。一部の大口買い手は複数年の長期契約(LTA)で値上げを抑えているが、当面は高値が続く前提で計画するのが妥当だ。
Q: 売上が前年比+246.6%というのは、そのまま値上がり率と考えてよいですか?
A: 完全な同義ではない。+246.6%はDRAM「売上」の伸びで、価格上昇に加え一部の数量増も含む。ただしメーカーが汎用ラインをAI向けに絞るなか出荷数量の急増は考えにくく、伸びの大半は単価上昇(メムフレーション)と解釈できる。
Q: PC需要が15%減るなら、待てば安く買えませんか?
A: 期待しにくい。スマホ・PCの需要が落ちても、メーカーは空いた生産能力を利益率の高いAI向けHBM・サーバーDRAMへ振り向けるため、汎用DRAMの供給が増えず価格が下がりにくい。需要減が価格緩和に直結しないのが今回の構造的特徴だ。