NANDの「完売」とは何か——DRAM逼迫に続く供給の第二波
2026年10月時点で、メモリ市場の逼迫はDRAMからNAND(ストレージ)側へと明確に広がっている。NANDフラッシュとは、電源を切ってもデータを保持する不揮発性メモリで、SSDの記憶媒体に使われる半導体である。Kioxiaの幹部は2026年10月、同社の2026年のNAND生産がすでに「完売」で、逼迫は2027年まで続く可能性があると述べ、「安価な1TB SSDの時代は終わった」と表現した。既存顧客でさえ前年比で最大30%の値上げに直面しているという。
情シスにとっての要点は、サーバーやクライアントのBOM(部品表)が、RDIMMなどのDRAMに続いてSSD側でもコスト上昇圧力を受け始めた点にある。DRAM逼迫の構造要因であるAI向けHBM(広帯域メモリ)へのウエハ再配分が、NANDの供給余力も同時に削っているためだ。RDIMMとは、サーバー向けに安定性を高めた登録バッファ付きのDRAMモジュールを指す。
価格と供給の最新数値(2026年10月時点)
結論として、ストレージ価格は前年比で2〜4倍の水準に達し、法人向けはさらに速いペースで上がる見通しだ。公開情報で確認できる主な数値は次のとおり。
- 256GB相当TLC SSD:契約価格が前年比約303%上昇(2026年Q3で約134.20ドル、前年は約33.30ドル)。
- 512GB相当TLC SSD:同期間に約62.40ドルから約252ドルへ。
- 1Tb TLC NANDチップ:2026年10月21日までの半年間で約123%上昇。
- エンタープライズSSD:2026年Q4に23〜28%の上昇見込み(一般的なNAND契約価格の見通し15〜20%を上回る)。
- Samsung:当四半期のNAND契約価格を100%超引き上げたと報じられている。
TLCとは、1つのセルに3ビットを記録する方式で、容量当たりの単価が低く大容量SSDの主流である。エンタープライズSSDとは、データセンターやサーバー向けに耐久性・信頼性を高めたSSDを指す。
サーバー調達への影響とは
影響は「DRAMとSSDの二重逼迫」という形で表れる。2026年のエンタープライズSSD需要は容量ベースで前年比80%超の伸びとされ、AIデータセンターがニアラインHDDをエンタープライズSSDへ置き換える動きが供給を一段と圧迫している。ニアラインHDDとは、アクセス頻度が中程度のデータを保管する大容量ハードディスクで、従来はコスト面でSSDより有利とされてきた区分である。
供給側の余力も限られる。SanDiskの生産能力は、過去の市況悪化で月産約56万枚のウエハを退役させた結果、2022年のピークを約30%下回るとされる。市場では、NANDの供給は2026年を通じて4〜5%の供給不足が続き、改善は早くて2027年半ばとの見方が出ている。Micronも制約が2027〜2028年まで続くとの見通しを示している。
2026年10月時点で、メモリ市場の逼迫はDRAMからNAND(ストレージ)側へと広がり、サーバーのBOMはDRAMとSSDの両面でコスト上昇圧力を受けている。DRAMの納期・割当枠を確保できても、SSDの割当や価格でサーバー全体の出荷が止まるリスクが現実味を帯びている。
情シスが確認すべき3つのポイント
- ストレージ構成の確定を前倒し:サーバー更改ではDRAMだけでなくエンタープライズSSDの容量・枚数・割当枠を同時に確定し、見積もりの有効期限と再値上げ条項を確認する。
- 容量設計の見直し:1TB級SSDの単価上昇を踏まえ、過剰な容量確保(オーバープロビジョニング)やHDD/SSDの階層再配分でBOMを最適化する。
- 調達先と時期の分散:Samsung・SK hynix・Micron・Kioxia・SanDiskなど供給元ごとに割当状況が異なるため、単一ベンダー依存を避け、2027年半ばまで逼迫が続く前提で発注時期を分散する。
よくある質問
Q: SSD価格が下がるのを待ってサーバー更改を遅らせるべきですか?
A: 2026年10月時点の公開情報では、NANDは2026年を通じて供給不足が続き、改善は早くて2027年半ば、制約は2027〜2028年まで続くとの見方が示されています。待機のメリットよりも割当枠を失うリスクの方が大きい局面で、必要分の早期確保が基本線です。
Q: DRAMとNANDは別物なのに、なぜ同時に逼迫しているのですか?
A: いずれもAI向けのHBMや高付加価値製品にウエハ・投資が優先的に配分されているためです。汎用DRAMもNANDも生産能力の取り合いになっており、サーバーのBOMはDRAM(RDIMM)とSSDの両面で上昇圧力を受けています。
Q: 既存ベンダーとの長期契約があれば値上げは回避できますか?
A: Kioxiaは既存顧客でも前年比最大30%の値上げに直面していると報じられており、長期契約でも数量割当や価格改定条項の確認が欠かせません。契約書の値上げ条項・割当保証の有無を点検してください。