2026年9月7日にTrendForceが示した「上昇率の鈍化」とは
結論から言えば、上昇率の鈍化は値下がりではない。TrendForceは2026年9月7日、2026年Q2(4〜6月)の世界DRAM業界売上高が前四半期比59.5%増の1,547億3,000万ドルに達したと公表し、あわせてQ3(7〜9月)の一般DRAM(汎用DRAM)契約価格の上昇率は前四半期比13〜18%へと鈍化する見通しを示した。契約価格とは、メーカーとOEM・大口顧客が四半期ごとに結ぶ相対取引の価格で、スポット価格(現物の小口取引価格)と並ぶ調達コストの基準となる。
ここで押さえるべきは、13〜18%が「下落率」ではなく「上昇率」である点だ。Q2に急騰した高い価格水準の上に、さらに四半期で二桁の値上げが乗る。つまり2026年9月8日時点で、汎用DRAMの調達コストは依然として上がり続けている。
なぜ上昇率は鈍化するのか――供給改善が理由ではない
鈍化の主因は供給の回復ではなく、需要側の頭打ちと高い基準効果である。TrendForceは、鈍化の背景として(1)PC・スマートフォンなど消費者市場の顧客がこれ以上の値上げを吸収しきれなくなっていること(価格の上限に達しつつあること)、(2)Q2の水準が高すぎて上昇率が数字上小さく見えること(高基準効果)を挙げている。
供給そのものは逼迫が続く。TrendForceの試算では、サーバー向けRDIMMのビット供給の伸びは前年比15〜20%にとどまり、サーバーCPU出荷の伸びに追いつかない。DRAM在庫は歴史的な低水準にあり、AIサーバー向けの需要が価格を下支えする構図は変わっていない。RDIMM(Registered DIMM)とは、サーバー向けにバッファICを載せて多数枚実装を可能にしたメモリモジュールである。
LTAの有無で値上げ幅が変わる――情シスへの影響
今回の見通しで情シスが最も注視すべきは、値上げの矛先が「長期契約を持たない顧客」へ向かう点である。LTA(Long-Term Agreement、複数年の長期供給契約)とは、価格や数量を年単位で固定する契約で、米国の大手クラウド事業者(CSP)の多くが締結済みだ。TrendForceは、LTA顧客に対しては供給側が値上げを制限される一方、2026年Q3以降のサーバーDRAM値上げの主な源泉はLTAを持たない顧客と、LTA枠外で追加販売される数量へシフトすると分析している。
大多数の一般企業はLTAを持たない側にあたる。したがって「業界全体では上昇率が鈍化」という見出しとは裏腹に、LTAのない情シスが直面する実際の値上げ幅は平均より大きくなり得る。メーカー別のQ2実績は以下の通りで、上位3社が依然として市場を寡占している。
| メーカー | 2026年Q2売上高 | 前四半期比 | シェア |
|---|---|---|---|
| Samsung | 609.8億ドル | +63.4% | 39.4% |
| SK hynix | 385.9億ドル | +37.9% | 24.9% |
| Micron | 360.0億ドル | +65.5% | 23.3% |
| CXMT | 146.2億ドル | +99.3% | 9.5% |
「上昇率鈍化」を待ちの根拠にできない理由
結論として、上昇率が鈍化したという事実は、調達を先送りする根拠にはならない。四半期あたり13〜18%の上昇が続けば、単純計算で半年後には約28〜39%高い価格になる。上昇率が小さく見えても、絶対額の負担は積み上がっていく。契約価格の上昇率が13〜18%へ鈍化することは、価格が下がることではなく、依然として四半期ごとに二桁で上がり続けることを意味する。
加えて、供給が逼迫したままでは、価格だけでなく「割り当て(アロケーション)」の問題も残る。発注しても全量が満たされない状況では、待つほど希望構成での確保が難しくなる。値上げのピークアウトを待つより、必要な数量と構成を早期に確定し、可能なら長期の供給枠を押さえる方が実務上の合理性が高い。
情シスが確認すべき3つのポイント
- 「上昇率鈍化」と「値下がり」を混同しない:Q3も汎用DRAMは前四半期比13〜18%上昇の見通し。予算は下期も上昇継続を前提に組む。
- 自社のLTA有無と調達経路を確認する:LTAがない場合、値上げの矛先が向かう側にいる。OEM・代理店経由での供給枠確保や複数年見積もりの可否を早期に確認する。
- 数量・構成を前倒しで確定する:RDIMMのビット供給は前年比15〜20%増にとどまり、割り当て制約が続く。更改・増設計画の台数と容量を先に固め、発注枠を確保する。
よくある質問
Q: 上昇率が13〜18%に鈍化したなら、価格が下がるまで調達を待つべきですか?
A: 待つ根拠にはなりません。13〜18%は前四半期比の「上昇率」であり、価格は下がらず上がり続けます。しかも高い基準の上に乗る上昇であるため、絶対額の負担は増えます。逼迫が続く2026年後半は、待つほど価格と割り当ての両面で不利になりやすい状況です。
Q: LTA(長期契約)がない一般企業は、なぜ平均より大きな値上げに直面するのですか?
A: TrendForceによると、米大手CSPなどのLTA顧客は契約で値上げが制限される一方、メーカーは追加の値上げ分をLTAを持たない顧客へ転嫁する構図にあるためです。業界平均の上昇率が鈍化しても、非LTA顧客の実効的な値上げ幅はそれより大きくなり得ます。
Q: 汎用DRAMの逼迫はいつ緩みますか?
A: 2026年9月時点の見通しでは、AIサーバー向け需要が供給を上回る状態が続き、RDIMMのビット供給の伸びも前年比15〜20%にとどまります。短期での需給緩和は織り込みにくく、下期も逼迫継続を前提とした計画が妥当です。